E1488 – ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DC-2013)

カレントアウェアネス-E

No.246 2013.10.10

 

 E1488

ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DC-2013)

 

 2013年9月2日から6日まで,2013年ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DC-2013; E988E1121E1232E1344参照)が,「未来へつなげる(Linking to the Future)」をテーマにポルトガルのリスボンで開催された。

 今回は,電子情報保存に関する国際学術会議(iPRES2013;E1354参照)と同時に開催された。どちらの会議のセッションにも自由に参加可能で,全体で37か国から392名,日本からは研究者や学生等9名が参加した。開催国のポルトガルからの参加が61名と最も多く、続いて英国及び米国が約50名、ドイツが約40名であった。

 本会議では,基調講演,研究論文・プロジェクト発表,特別セッション及びポスターセッションが3日間にわたり行われた。また,本会議の前後には,Linked Open Data(CA1746参照),オントロジー等のセマンティックウェブの標準技術やメタデータの由来,語彙の保存等に関する様々なチュートリアル及びワークショップが開催された。

 研究論文・プロジェクト発表は,Linked Dataやe-サイエンス,語彙の設計,教育,メタデータの連携・再利用等のテーマごとに行われた。このうち最優秀プロジェクト報告賞には,立命館大学大学院のヒルゲサイハン(Batjargal Biligsaikhan)氏ほかの,複数の浮世絵画像データベースを対象としたリンクの動的生成による多言語横断検索システムに関する発表が選ばれた。ヒルゲサイハン氏らのプロジェクトは,検索結果に含まれる「国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス(Web NDL Authorities)」やOCLCのバーチャル国際典拠ファイル(VIAF)等に収録されているLinked Data形式の典拠データ間のリンクを動的に生成することで,様々な言語で記述されている複数の浮世絵の画像データベースを同時に検索できるプロトタイプシステムを構築するというものであった。

 また,Schema.org(E1192参照)に関する特別セッションが,「Schema.orgとは何か」及び「なぜSchema.orgなのか」をテーマに開催された。Schema.orgの語彙は,全ての領域に共通するトップレベルの一般的な概念体系ではなく,様々な機関やコミュニティがその採用状況や経験に基づき,語彙を提案しながら,いわばボトムアップ式に構築していくことを目指している。セッションでは,Schema.orgの採用に取組む側と,GoogleやYandexといったSchema.orgの取組自体を進める検索エンジン側の参加者が一堂に会し,活発な議論や課題の共有が行われた。Schema.orgの概要や採用する利点,フランス国立図書館(BnF)の蔵書目録とデジタル資料を統合的にLinked Open Dataとして提供する“data.bnf.fr”プロジェクトやEuropeana(CA1785参照)での採用事例,そして書誌データの記述への拡張を提案するW3C Schema Bib Extend Community Groupの取組等に関する報告があった。

 今回の会議では,DC-2013全体のテーマである「未来へつなげる」ための成果や課題をiPRES2013の参加者とも共有できるよう,相互に参加可能な会議形態がとられただけでなく,内容的にもメタデータと保存の両コミュニティの関心に共通するテーマが充実していた。例えば,メタデータの語彙の持続可能性に関するワークショップでは,語彙の管理主体の明確化や変更履歴の維持管理,語彙変更時の利用者への対応といった技術面及び運用面での課題について,語彙の作成,管理,保存及び利用のそれぞれの立場から意見が交わされた。また,電子情報の維持管理に対する課題解決に向け,組織レベルでの目標や方針,戦略の検討の必要性を説いたBnFのイリアン(Gildas Illien)氏の基調講演からも,両コミュニティが連携することの意義が感じられた。BnFでは,限られた人的資源や財的資源を最大限に活用できる業務フローの実現に向け,メタデータと保存の専門家が課題やノウハウを共有できる体制づくりに既に着手していることが紹介された。いくらメタデータを充実させても明日にでも消えてしまう恐れがあるならば,逆に,いくら長期間保存できても適切なメタデータが付与されていないために発見する手段がないならば,その情報は利用者にとって意味をなさない。今後も両コミュニティが協力してメタデータと保存の課題に取組んでいくことが重要であると考える。

 来年度の会議は,2014年10月に米国テキサス州のオースティンで開催される予定である。

(電子情報部電子情報流通課・柴田洋子)

Ref:
http://dcevents.dublincore.org/index.php/IntConf/dc-2013/
http://dcevents.dublincore.org/index.php/IntConf/dc-2013/schedConf/presentations
http://www.infosta.or.jp/journal/201309j.html
E988
E1121
E1192
E1232
E1344
E1354
CA1746
CA1785