E1344 – ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議<報告>

カレントアウェアネス-E

No.223 2012.09.27

 

 E1344

ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議<報告>

 

 「2012年ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DC-2012)」(E988E1121E1232参照)が,2012年9月3日から7日にマレーシアのサラワク州クチンで開催された。

 12回目となる今回は,「グローバルな課題に取組むためのメタデータ」をテーマに掲げ,Knowledge Technology Week 2012の一環として,人工知能やマルチエージェントを研究領域とするPRICAI及びPRIMA等の会議と合同で行われた。DC-2012には,日本からの7名を含む約50名が参加し,例年に比べて小規模ながらも,セマンティックウェブにおけるメタデータに関する最新動向の共有や意見交換が活発に行われた。

 3日間の本会議に先立ち,3日及び4日のプレカンファレンスでは,セマンティックウェブ技術を適用したメタデータの設計・開発に必要な知識を学ぶチュートリアルが開催された。ウェブ上で相互運用性の高いデータの公開・共有を実現するために必要なLinked Data(CA1746参照)やURI等の基本的な概念と,語彙間の関係等の概念体系を表すオントロジー(CA1598参照)の設計・構築方法をそれぞれテーマとし,ワークショップ形式を取り入れながら解説が行われた。

 5日から7日にかけての本会議では,基調講演2本,ペーパー発表及びプロジェクト報告計13本及び特別セッション1本が開催された。

 基調講演は,ブリックレー(Dan Brickley)氏及びコイル(Karen Coyle)氏がメタデータのこれからについてそれぞれの視点から論じた。

 ブリックレー氏は,かつてW3Cにおいて多くのセマンティックウェブ関連の技術標準策定に携わり,現在,Google等によるschema.org(E1192参照)プロジェクト等多様な活動に従事している。講演では,ウェブ上のリソースを発見するためのシンプルなメタデータとして広く普及してきたダブリンコアの歴史と成果が振り返られた。現在,ダブリンコアは,ウェブにおいて構造化データの標準となりつつあるschema.orgと語彙のマッピング等で連携し始めているが,そのさらなる連携や,Linked Dataで多くのデータセットと繋がる語彙であるダブリンコアの保存の促進等,今後,ウェブの世界をより進展させていくためにコミュニティとして期待される役割が提起された。

 また,コイル氏は,図書館員として30年以上様々な図書館技術に携わってきた経験から,今日構築されているオントロジーやLinked Dataの多くが,セマンティックウェブが普及する以前の技術を適用して作られた過去のデータの蓄積に基づくため,本来のLinked Dataの概念を実現しているとはいえないと指摘した。従来の物理的な図書館資料にとどまらず,ウェブ上の様々な形の知識・情報を幅広く検索しアクセスできるような,多様な観点に基づく組織化や表現の必要性が論じられた。

 ペーパー発表及びプロジェクト報告では,「Linked Open Data」「信頼性」「科学データ」「変換」及び「文化遺産」の5つのセッションごとに,各テーマに沿った発表が行われた。

 特別セッションでは,Linked Dataとしてデータをウェブ上に公開できるオープンソースCMSであるDrupalの採用事例の紹介や今後の実用可能性等をテーマにアンカンファレンス形式で議論する場が設けられた。

 セマンティックウェブやLinked Dataといった技術や概念はここ数年で広く浸透してきたが,依然として,図書館や特定の主題分野といった閉じたコミュニティでのみ有効なデータも多い。そのため,DC-2012では,オープンデータとしてグローバルに利活用できるような取組みの状況を共有し,今後さらにデータの開放性や相互運用性を高める方法について意見交換を行う場となった。なお,本会議の講演資料はDC-2012のウェブサイトで公開されている(スライドは後日公開予定)。

 来年度の会議は,2013年9月にポルトガルのリスボンで,デジタル情報の保存に関する国際会議iPRES(International Conference on Preservation of Digital Objects)(E990E1109参照)と共催の予定である。

(電子情報部電子情報流通課・柴田洋子)

Ref:
http://dcevents.dublincore.org/index.php/IntConf/dc-2012
http://dcevents.dublincore.org/index.php/IntConf/dc-2012/schedConf/presentations
CA1598
CA1746
E988
E990
E1109
E1121
E1192
E1232