E1463 – 若者の図書館利用習慣と図書館への期待

カレントアウェアネス-E

No.242 2013.08.08

 

 E1463

若者の図書館利用習慣と図書館への期待

 

 図書館の利用習慣や図書館に対する期待は,若者と他の世代とでは異なるのだろうか。2013年6月25日,米国のPew Research Centerが,その実態を数量的に明らかにする調査レポートを公表した。このレポートは“Younger American’s Library Habits and Expectations”と題するもので,調査は2012年10月15日から11月10日にかけて16歳以上の米国人を対象に電話インタビューにより実施されたものである。分析にあたっては,年齢区分として16-29歳,30-49歳,50-64歳,65歳以上を設定し,16-29歳を若者と定義している。若者については,さらに細かい区分(16-17歳,18-24歳,25-29歳)も設定している。

 レポートではまず,若者のインターネットの利用状況や読書習慣について確認している。ここでは,電子書籍の利用率については若者も30歳以上の利用者も同様に増加傾向にあること,その一方で,過去1年以内に印刷版書籍を1冊以上読書した割合については30歳以上では64%であるのに対し若者では75%と,むしろ多いことなどが明らかになっている。特に16-17歳については,85%と他に比べ際立って高くなっている。

 次に,図書館の全般的な利用状況について確認している。若者の過去1年の図書館利用率は58%で,全体の利用率53%よりやや多く,また図書館カードの保有率も若者は65%で,全体の保有率63%より若干多い。また過去1年の若者の図書館のウェブサイトの利用率については28%(全体では25%)であり,特に携帯端末での図書館ウェブサイトの利用率は18%(全体では13%)といずれも利用がやや活発な世代であることがうかがえる。

 レポートではさらに具体的に図書館で実際に何をしているのかについても確認している。ブラウジングや貸出サービスの利用については若者も30歳以上の利用者も同様に圧倒的多数が行っているが,これに続いて若者では,興味のあるトピックについての調べもの(60%),座席での読書やメディアの利用(60%),調査用データベースの利用(51%)の項目が多くなっている。これらは30歳以上の利用者に比べていずれも大きい比率である。逆に30歳以上の利用者は,図書館員に支援を求める(53%)とするものが多く,この値は若者では40%であり大きな開きがある。とはいえ,多くの若者が図書館員の支援の存在を認識し利用していると評価してよいだろう。

 このような図書館利用状況にある若者が図書館に期待していることはなんだろうか。これについて若者が「絶対に実施すべき」と答えたものが多い順にみていくと,学校図書館との連携(87%),無料のリテラシープログラム(87%)に続いて,より快適なスペース(64%),サービスごとに区切られたスペース(57%)がランクインし,図書館の“空間”を重視していることがうかがえる。また利用者の資料のデジタル化の支援についても41%が重視していることは興味深い。一方,多くの図書館をオンラインに移行する,サービスを自動化する,公共のエリアから本をなくすといった項目については,「絶対に実施すべきでない」と答えたものの比率が他の項目に比べて多くなっている(それぞれ18%,25%,29%)。若者の図書館への期待は,バーチャルの世界に必ずしも偏向しているものではないことがうかがえる。

 さらに将来的に図書館に期待されるサービスについても尋ねている。若者が「とても期待する」と答えたサービスを多い順に見ていくと,図書館内で資料を探すための携帯向けGPSアプリ(45%),館外の様々なところに置かれる貸出キオスク(44%),図書館サービスにアクセスするための携帯アプリ(42%),オンライン調査サービス(Ask a Librarian)(37%),新しいITデバイスを試すことのできるプログラム(36%)などとなっている。

 同調査では,自分及び家族にとって,あるいはコミュニティにとって図書館が重要かという点についても調査を行っている。自分および家族にとって極めて重要と考える人の率は,30-40代が最も多く53%であり,若者は年齢が下がるごとに小さくなり,16-17歳では18%となっている。またコミュニティにとって極めて重要と考える人の率は,年齢が進むごとに大きくなり,16-17歳の37%に対し,ピークは65歳以上のグループで70%となっている。結果は自然なものともいえるが,若者が,このような認識を持つ上の世代に育まれているという点は注目に値しよう。

 以上のように,この調査では,米国の若者の図書館の利用習慣,図書館への期待が明らかになるとともに,これらが30歳以上の世代とは部分的に異なる傾向にあることも明らかになっている。特に,多くの若者が,ITの活用に馴染んでいながらも,図書館を調べものに有効に活用している様子や,快適に時間を過ごす空間として期待している様子が浮き彫りになっていることは興味深い。日本の若者はどのような傾向にあるのかについても興味がわくところである。

(関西館図書館協力課・依田紀久)

Ref:
http://libraries.pewinternet.org/2013/06/25/younger-americans-library-services/
http://libraries.pewinternet.org/files/2013/06/PIP_Younger_Americans_and_libraries.pdf