カレントアウェアネス-E
No.218 2012.07.12
E1313
米国国立公文書館,開かれた政府の実現へ向けて活動継続
米国国立公文書館(NARA)は,開かれた政府の実現に向けた活動を継続している。
NARAは2010年4月にフェリエロ(David S. Ferriero)館長のもと“開かれた政府計画”(Open Government Plan)を策定した。それ以降,計画に示した70件にわたる課題に沿って資料のデジタル化の取組み(E1235参照)や国家機密解除に関する取組み(E1086参照)等を実施してきた。
2012年6月,これまでの成果を踏まえ,今後2年間の新たな行動内容を設定する“開かれた政府計画2012-2014”を公表した。本文では,テーマごとにこれまでの取組みが整理され,今回提案されている活動項目がどのような文脈にあるものなのかがわかるように説明されている。また付録Bには,32の提案項目が一覧表にまとめられている。これらの項目には,連邦情報公開法(FOIA)に基づく情報開示請求の滞貨処理,米国行政管理予算局(OMB)と協力して進めている21世紀の政府記録管理の枠組みを示す指示の発表など,連邦政府の情報を開示していくための重要な取組みが列挙されているとともに,NARAの組織・業務自体を参加型,協同型のものに変えていく取組みにも力点が置かれている。ここでは後者に該当する3つの活動項目を紹介する。
活動項目の3(本文2.2)は,内部協同ネットワーク(internal collaboration network:ICN)を通じた職員の協同と知識共有の方策への取組みの継続である。2010年計画に基づきNARAは,職員による協同と知識共有についての検討を進めてきた。そして組織横断的な実践コミュニティの構築を可能にするため,2012年1月にシステムのセットアップを開始し,2012年2月には職員300人の参加によりテスト運用を開始した。計画では,夏までに全職員が参加するものとし,ベストプラクティスを見極めていくとのことである。
活動項目の5(本文3.1)は,“市民アーキビスト”(citizen archivist)との関係性強化に向けた取組みである。フェリエロ館長は2010年4月に,市民アーキビストのコンセプトを導入した。これは,NARAの膨大な資料をオンラインでより利用しやすくするために,市民によるスキャニング(デジタル化)や,米国公文書館目録へのタグ付けを積極的に受け入れていくものであり,クラウドソーシングの考え方に沿うものである。市民アーキビストの活動のポータルサイトとして2011年12月に“Citizen Archivist Dashboard”を立ち上げるとともに,2012年1月には所蔵資料のテキスト化作業を有志の市民が行うプロジェクト“National Archives Transcription Pilot Project”を開始した。計画では,これら市民アーキビストとの関係をより一層強化していくとのことである。
活動項目の9(本文3.3)は,ソーシャルメディア戦略の強化に向けた取組みである。NARAは,2010年12月にソーシャルメディア戦略を公表した。その作成自体も,ブログ“NARAtions”を通じた市民とのコミュニケーションを行いつつ進められた。この戦略に基づき,Twitter,YouTube,Facebook,Flickr等のソーシャルメディアの活用を積極的に推し進め,その一覧を示す“Social Media Directory”も開設している。その積極的な活用は,フェリエロ館長が「連邦政府におけるソーシャルメディアの活発な利用のリーダーとみられている」と計画巻頭のメッセージの中で表現するまでに至っている。今後NARAは,ソーシャルメディアを,職場におけるコミュニケーションと協同を変革するためにさらに活用していくとともに,政府の記録管理者,機密解除関係者等との関係を強化し,また研究者や市民アーキビストとの関係を構築・強化するため,活用していくとのことである。
NARAが今後2年間でどのような成果を挙げるのか,注目される。
(関西館図書館協力課・依田紀久)
Ref:
http://www.archives.gov/open/open-government-plan-2.0.pdf
http://www.archives.gov/open/open-plan.html
http://www.archives.gov/citizen-archivist/
http://transcribe.archives.gov/
http://blogs.archives.gov/online-public-access/
http://www.archives.gov/social-media/
http://www.archives.gov/social-media/strategies/
E1086
E1235