2021年8月11日付で、国際図書館連盟(IFLA)が刊行する査読誌“IFLA Journal”に、カナダ・カルガリー大学の図書館担当部局“Libraries and Cultural Resources”に所属するJames E Murphy氏らによる論文“Expanding digital academic library and archive services at the University of Calgary in response to the COVID-19 pandemic”が掲載されています。
同論文では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック下においてカルガリー大学図書館が実施した次のような取組について、その概要を紹介しています。
(電子図書館サービス)
・複数部署にまたがるサービス検討チームの設置
・学生が自らの研究分野・個人的背景(社会人学生、育児中の学生、留学生など)・使用言語に基づいて、図書館員とつながる方法を提供する個人図書館員プログラム“myLibrarian”の開始
・図書館内の360度バーチャルツアーの作成(ツアー内の各スポット・設備には関連するオンラインサービスへのリンクや説明を付与)
・Zoom、Microsoft Teams、Desire2Learn(同大学が使用しているCMS)を利用したオンラインでの指導(インストラクション)サービス
・チャットレファレンスサービスの担当者増員と研修の実施
・チュートリアル動画の作成
・オンラインサービスなどCOVID-19関連情報のFAQへの反映
(来館サービス)
・非接触式の本の受取サービス
・予約可能な個人学習スペース
・図書館の屋外に設置したテント内での質問対応
(図書館のコレクション)
・大学院生の研究ニーズにあわせた資料の購入による研究支援
・HathiTrust緊急一時アクセスサービスの利用
・Ex Libris社が提供する、授業で使う資料リストの管理システム“Leganto”の導入
この他、アーカイブ・特殊コレクションサービスに関しても、サービス・教育のオンライン化や、資料のオンライン展示等に取り組んだこと等が紹介されています。
本文中には取組の一覧を整理した図表も掲載されており、各取組の利点と課題、持続可能性、パンデミック後の継続見込みといった点について簡潔にまとめています。
Murphy, James E et al. Expanding digital academic library and archive services at the University of Calgary in response to the COVID-19 pandemic. IFLA Journal. 2021. https://doi.org/10.1177/03400352211023067
参考:
カナダの公共図書館における新型コロナウイルス感染症への対応(文献紹介)
Posted 2021年7月9日
https://current.ndl.go.jp/node/44397
E2357 – ウィズ・コロナ時代の北米の大学図書館サービス<報告>
カレントアウェアネス-E No.408 2021.02.18
https://current.ndl.go.jp/e2357
CA1991 – コロナ禍における米国シカゴ大学図書館の対応と日本研究支援 / 吉村亜弥子
カレントアウェアネス No.347 2021年03月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1991