米・ITHAKA S+R、大学図書館の指導者層を対象に2020年秋に実施した多様性・公平性・包括性、及び反人種主義に関する調査の報告書を公開

2021年3月17日付で、米国のIthaka S+Rは、大学図書館の指導者層を対象とした多様性・公平性・包括性、及び反人種主義に関する調査結果の報告書を公開しました。

Ithaka S+Rは2010年から、米国の非営利4年制大学の図書館長等を対象として、大学図書館の戦略に関する調査を3年ごとに実施しており、最新の調査は2019年秋に行われました。しかし2020年には、大学図書館において組織の構成員やコレクションの多様性・公平性・包括性の向上が長年の課題である中で、黒人男性ジョージ・フロイド氏の殺害事件とその後の“Black Lives Matter”運動による反人種主義の機運が高まったことを受けて、大学図書館に与えた影響を把握するために3年の周期を待たずに今回の調査が行われました。2020年9月に多様性・公平性・包括性及び反人種主義問題の課題・戦略等について、2019年秋以降の1年間の進展に関する調査が行われ、対象者全体の43%に当たる638件の回答を得ています。調査結果に基づく報告書は主に次のような所見を示しています。

・公平性・多様性・包括性を組織内で養成する能力について、大学図書館の指導者層が持つべき特に重要な能力とする回答が、2019年の調査時と比べて大幅に増加している

・自館の組織が公平性・多様性・包括性等の課題に十分に配慮した人事戦略を整備しているとする回答は、2019年の調査時と比べて減少した

・新型コロナウイルス感染症の流行に伴う人件費の削減が、有色人種の図書館員に特に影響を与える可能性に懸念を示す回答は少なかったが、図書館の臨時休館等に伴う実際の影響への回答結果からは、有色人種の図書館員は白人の図書館員よりも大きく影響を受けていることが推定される

・有色人種の著者による著作や反人種主義を扱ったコンテンツによるコレクション再構築を計画しているという回答はごく少なかった

National Movements for Racial Justice and Academic Library Leadership Results from the Ithaka S+R US Library Survey 2020(Ithaka S+R,2021/3/17)
https://doi.org/10.18665/sr.314931

参考:
E2285 – 米国における大学図書館の図書館長等の意識調査2019年版
カレントアウェアネス-E No.395 2020.07.30
https://current.ndl.go.jp/e2285

米国図書館協会(ALA)、黒人・先住民・有色人種(BIPOC)、抗議デモへの参加者・ジャーナリストへの警察の暴力を非難する声明を発表
Posted 2020年6月12日
https://current.ndl.go.jp/node/41205

米・アイオワ大学、“Black Lives Matter”に関する大学構内のスプレーペイントの写真を保存
Posted 2020年7月15日
https://current.ndl.go.jp/node/41505

米・ITHAKA S+R、大学図書館の指導者層を対象とした新型コロナウイルス感染症影響下の戦略・予算編成に関する調査報告書を公開
Posted 2020年12月14日
https://current.ndl.go.jp/node/42752