2021年2月に刊行された、米国の大学・研究図書館協会(ACRL)の“College and Research Libraries News”のVol.82, no.2に、香港城市大学邵逸夫(Run Run Shaw)図書館のSteve Ching氏と“Lighthouse Heritage Research Connections”プロジェクトのBrad New氏による記事“Touching history: Activating historical materials and enhancing inclusivity in the library”が掲載されています。
同館では、学生や市民に香港のアーカイブ資料に触れてもらう機会を増やすためのプロジェクトとして、香港の歴史の大部分を占める「海洋史」をミクロな観点からもグローバルな観点からも明らかにする事ができる「灯台」に焦点をあてた“Lighthouse Heritage Research Connections(灯台遺産研究コネクションズ)”プロジェクトに取り組んでいます。
本文献は、様々な背景を持つ学生が参加する同プロジェクトに2020年に視覚障害のある学生Samantha氏が参加したことで、視覚障害者・聴覚障害者等へのアクセシビリティを高め、人文学への興味を刺激する展示を実施できたことを紹介する記事です。
そのような事例として、香港海洋博物館と香港城市大学で開催された展覧会において、
・同プロジェクトが同館のデジタルアーカイブ搭載の一次資料を用いて3D複製した灯台が、視覚障害者等が触って理解するために有益であったこと
・Samantha氏自身が3D複製された灯台を用いて学習することで、視覚障害者等が灯台について理解することを助けるアクリル製の触図を作成することができたこと
・手稿類の展示では、書かれた内容を説明する点字および資料の形態が触って分かる触図の2種類を用意したこと
・デジタルアーカイブ搭載資料から展示した文書や新聞記事のテキストを、英語と広東語で録音し、音声で聴けるようにしたこと
等が挙げられています。
同プロジェクトでは、今後も、参加する視覚障害のある学生を増やしていくとしています。
Steve Ching, Brad New. Touching history: Activating historical materials and enhancing inclusivity in the library. College and Research Libraries, 2021, 82(2), p. 62-79.
https://doi.org/10.5860/crln.82.2.62
Lighthouse Heritage Research Connections(香港城市大学邵逸夫図書館)
https://www.cityu.edu.hk/culturalheritage/lighthouse.htm
参考:
【イベント】公開シンポジウム「日本におけるユニバーサル・ミュージアムの現状と課題――2020オリパラを迎える前に」(11/3-4・吹田)
Posted 2019年8月6日
https://current.ndl.go.jp/node/38735