2020年におけるマラケシュ条約加盟国拡大の展開とEIFLによる条約加盟国に対する支援(記事紹介)

2021年1月29日、途上国において図書館を通じたデジタル情報へのアクセスを推進しているEIFLは、2020年におけるマラケシュ条約加盟国拡大の展開とEIFLによる条約加盟国に対する支援等を紹介した記事として、“Marrakesh reaches 100 in 2020”を公開しました。

同記事は2020年に、セルビア、タンザニア、ベラルーシ、コートジボワール、エチオピアのEIFLのパートナー国5か国を含め、新たに15か国がマラケシュ条約に加盟し2020年末までに合計の加盟国が102か国に達したことを紹介しています。EIFLは、2016年に20か国でスタートした同条約が着実に加盟国を拡大した背景には、アクセシブルなフォーマットの出版物の割合が世界全体でわずか7%であるという「本の飢餓(Book Famine)」の解消に向けて、政府・図書館・視覚障害者団体が世界中で継続的な取組を進めていることの表れであるとして高く評価しています。

EIFLのネットワーク加盟国はマラケシュ条約加盟国全体の約5分の1を占めており、EIFLは同条約の実践に向けた支援も行っています。例えば、2020年10月に同条約が発効し国内法化したベラルーシにおいて、EIFLは2016年から条約の採択や著作権法改正に向けた支援を行っていました。また、2020年に加盟した他の4か国に対しても、同条約を念頭に置いた著作権法改正に関する提言を行っています。

記事末では、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大でさらに高まった同条約の意義について言及しています。同記事では、ロックダウン等による情報アクセスが制限された期間中、著作権の例外の整備が不十分であったことなどにより、視覚障害者のアクセシブルな資料へのアクセスが大幅に制限されていたことを指摘する世界盲人連合(WBU)の調査や、WBUが調査の結果を受けて、条約批准や国内法化に向けたアドヴォカシー活動を一層強化していることなどが紹介されています。

Marrakesh reaches 100 in 2020(EIFL,2021/1/29)
https://eifl.org/news/marrakesh-reaches-100-2020

参考:
CA1831 – マラケシュ条約―視覚障害者等への情報アクセスの保障に向けたWIPOの取り組み / 野村美佐子
カレントアウェアネス No.321 2014年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1831

CA1800 – EIFL:その組織と活動 / 井上奈智
カレントアウェアネス No.317 2013年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1800

E2090 – 国際図書館連盟(IFLA),マラケシュ条約の実務ガイドを公開
カレントアウェアネス-E No.360 2018.12.20
https://current.ndl.go.jp/e2090

EIFL、マラケシュ条約に関する図書館向けのガイドを発表
Posted 2014年12月5日
https://current.ndl.go.jp/node/27579