2021年2月9日、世界知的所有権機関(WIPO)の下に設立されたAccessible Books Consortium(ABC)は、新型コロナウイルス感染症の流行期間中も研修プログラムを継続するため、アクセシブルな書籍作成に関するオンライン研修を実施していることを発表しました。
ABCのオンライン研修プログラムは、開発途上国・後発開発途上国でプリントディスアビリティのある人々にサービスを提供する連携機関を対象に、点字・音声・電子テキスト・大活字などのアクセシブルな形式の書籍作成に関する最新技術を提供する目的で行われています。コロナ禍による移動制限等を背景に、WIPOはDAISYコンソーシアムと共同してオンライン研修プログラムを開発しました。研修モジュールは、英語・フランス語・スペイン語で作成され、2021年第1四半期までに連携機関から95人以上が受講することを予定しています。
研修受講者の多数が視覚その他に障害を持っていることを踏まえて、ABCのオンライン研修プログラムは、ナビゲーション機能付の教材・アクセシブルな演習コンテンツ・画像に対する内容記述・キャプション付の動画など、インクルーシブデザインでプラットフォームを構築しています。
ABCは開発途上国におけるアクセシブルな書籍作成への研修・技術支援や、教育機関におけるアクセシブルな授業教材の作成に資金提供を行うため、キャパシティー・ビルディングのプロジェクトを展開しており、2015年から2020年には25の連携機関で約1万3,700点の教材が作成され、2021年末までにはさらに約5,300点の作成見込みであるなどの成果を上げています。ABCは新たに開始したオンライン研修プログラムを、キャパシティー・ビルディング活動の効率やアウトリーチの効果をさらに高める取組に位置づけています。
WIPO’S ABC Launches Its First Online Course in Accessible Book Production(ABC,2021/2/9)
https://www.accessiblebooksconsortium.org/news/en/2021/news_0003.html
参考:
CA1831 – マラケシュ条約―視覚障害者等への情報アクセスの保障に向けたWIPOの取り組み / 野村美佐子
カレントアウェアネス No.321 2014年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1831
E2090 – 国際図書館連盟(IFLA),マラケシュ条約の実務ガイドを公開
カレントアウェアネス-E No.360 2018.12.20
https://current.ndl.go.jp/e2090
プリントディスアビリティのある人たちがアクセス可能な本の増加をめざし、世界知的所有権機関(WIPO)等が“Accessible Books Consortium”を立ち上げ
Posted 2014年7月3日
https://current.ndl.go.jp/node/26495
Accessible Books Consortium 、“ABC Global Book Service”の開始を発表
Posted 2017年6月2日
https://current.ndl.go.jp/node/34089
国立国会図書館、マラケシュ条約に基づく読書困難者のための書籍データの国際交換サービスを開始
Posted 2019年11月20日
https://current.ndl.go.jp/node/39559
2020年におけるマラケシュ条約加盟国拡大の展開とEIFLによる条約加盟国に対する支援(記事紹介)
Posted 2021年2月2日
https://current.ndl.go.jp/node/43169