2023年5月3日、英・Jiscが、英国の大学がSpringer Nature社とオープンアクセス(OA)契約に合意したと発表しました。
Springer Natureとの交渉は、英国大学協会(UUK)が招集しJiscの主要な学術出版社との契約交渉の支援を行う“UUK/Jisc content negotiation strategy group”が中心となり行われました。今回の“Read and Publish”契約は、2022年12月31日に失効した“Springer Compact”とNature関連誌に関する2つの旧契約に代わるものです。契約期間は3年で、これにより英国の大学はNature関連誌やPalgraveポートフォリオ等を含む、Springer Nature社の2,500以上のジャーナルで完全かつ即時のオープンアクセス(OA)が可能になります。
発表の中では、Springer Nature社からの最後の提案に関して、回答者110人のうちの大多数が「重大な留保を付して」受け入れると投票したことが報告されています。契約外のOA出版にかかる高いコストや同社の論文処理費料(APC)の計算方法といった透明性の低さに対する懸念があったほか、同社の著者の権利保持へアプローチが、世界における公平なOA出版への障壁になっているという意見が出たことが述べられています。
契約は大筋合意に達していますが、最終的な契約の詳細は今後数週間以内に決定される予定とあります。発表の中では、契約の主なポイントについても述べられています。
UK universities agree open access publishing deal with Springer Nature(Jisc, 2023/5/3)
https://beta.jisc.ac.uk/news/all/uk-universities-agree-open-access-publishing-deal-with-springer-nature-03-may-2023
参考:
英国の主要大学で構成されるRussell Groupら、Springer Nature社からの提案受け入れを拒否する声明を発表 [2023年03月01日]
https://current.ndl.go.jp/car/173285
英・Jisc、Elsevier社との3年間のオープンアクセス契約に合意 [2022年04月08日]
https://current.ndl.go.jp/car/45951
英・JiscとSpringer Nature社、既存の“Read and publish”契約の対象に医学・科学関連学会のジャーナルコレクション“Academic Journals”を追加して2022年まで延長 [2021年01月26日]
https://current.ndl.go.jp/car/43089
英国初の“Read & Publish”契約となった2016年から2018年の“Springer Compact”試験契約に関する英・Jiscの評価(文献紹介) [2020年01月07日]
https://current.ndl.go.jp/car/39892
CA1903 – 動向レビュー:研究助成機関によるオープンアクセス義務化への大学の対応―英国の事例― / 花﨑佳代子
カレントアウェアネス No.332 2017年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1903
CA1990 – 動向レビュー:プランS改訂版発表後の展開―転換契約等と出版社との契約への影響 / 船守美穂
カレントアウェアネス No.346 2020年12月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1990
CA1977 – 動向レビュー:学術雑誌の転換契約をめぐる動向 / 尾城孝一
カレントアウェアネス No.344 2020年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1977