英国初の“Read & Publish”契約となった2016年から2018年の“Springer Compact”試験契約に関する英・Jiscの評価(文献紹介)

英・Jiscの研究や活動の成果物等を保存するデジタルアーカイブJisc Repositoryに、2020年1月1日付で、論文“Transitioning to open access: an evaluation of the UK Springer Compact Agreement pilot 2016-2018”のプレプリント版が公開されています。

同論文はJiscのMafalda Marques氏、Graham Stone氏の共著により執筆され、2020年9月刊行の米国の大学・研究図書館協会(ACRL)の“College and Research Libraries (C&RL)”のVol.81, no.6に掲載予定の論文です。英国にとって初めての“Read & Publish”契約となった、2016年から2018年の3年間を契約期間とする“Springer Compact”試験契約の分析を内容としています。

論文では、この契約によりオープンアクセス(OA)で出版された論文数、著者が論文のOA化をオプトアウトした件数、契約の条件に不適格であったためOA化が拒否された件数等のデータが分析に使用されています。機関の費用抑制、OA化のオプトアウトや拒否によって発生する財政的な影響についても言及されています。

分析の結果に基づいて、2014年のレートを出版に関するコストの上限とする単一料金を支払うことで、OA出版のための追加費用約2,000万ユーロの支払を回避しコンソーシアムレベルでは出版にかかる総費用が抑制されたこと、全ての契約参加機関が契約期間中に2014年に費やされたAPC総額と同等か上回る数のOA論文を出版したこと、などが説明されています。結論部分では、今後の契約のための推奨事項や「Plan S」原則準拠のための検討事項が示されています。

Transitioning to open access: an evaluation of the UK Springer Compact Agreement pilot 2016-2018(Jisc Repository)
http://repository.jisc.ac.uk/7567

Transitioning to open access: an evaluation of the UK Springer Compact Agreement pilot 2016-2018 [PDF:19ページ](Jisc Repository)
http://repository.jisc.ac.uk/7567/1/Marques_and_Stone_Transitioning_to_open_access_an_evaluation_of_the_UK_Springer_Compact_Agreement_pilot_author_accepted_version.pdf

参考:
スウェーデン王立図書館(NLS)、Springer Nature社との“Springer Compact”契約の効果を検証した報告書を公開
Posted 2018年2月14日
https://current.ndl.go.jp/node/35489

Springer Compact(オフセット契約)によるオープンアクセス(OA)の状況
Posted 2018年3月27日
https://current.ndl.go.jp/node/35732

E1790 – オランダ大学協会と大手学術出版社とのOAに関する合意
カレントアウェアネス-E No.302 2016.04.28
https://current.ndl.go.jp/e1790