2024年3月7日、英・Jiscが、英国における転換契約に関する調査報告書“A review of transitional agreements in the UK”を公開しました。
Jiscは、初となる転換契約を2016年にSpringer社と締結し、その後、2024年1月までに出版社47社と75件の転換契約の交渉や更新を行ってきたとあります。
Jiscの最初の転換契約となったSpringer社との交渉開始から10年が経過し、調査報告書では以下の5点に焦点を当て、転換契約がオープンアクセス(OA)への移行を実現するに当たりどの程度効果的であったか、また、転換契約が英国の高等教育分野の要求をどの程度満たしたかについて検証されています。
・ 学術文献がどの程度OAであるか
・ 転換契約は世界及び英国の研究出版物へのOAにどのような影響を与えたか
・ 転換契約は英国の教育機関のコストにどのような影響を与えたか
・ 転換契約は著者が資金提供者の要求を遵守することをどの程度可能にしたか
・ 転換契約は想定されていたような一時的かつ過渡的なものとなっているか
報告書は、転換契約には高等教育分野のコスト削減等の利点があるものの、ペイウォールシステムからOAへの世界的な完全移行への起爆剤とはなっていないとし、今後に向けた推奨事項等を提示しています。
Jisc review of UK open access and transitional agreements finds positives, but that a full transition is not in sight(2024/3/7)
https://www.jisc.ac.uk/news/all/jisc-review-of-uk-open-access-and-transitional-agreements-finds-positives-but-that-a-full-transition-is-not-in-sight
A review of transitional agreements in the UK: Executive summary [PDF:14ページ]
https://repository.jisc.ac.uk/9476/1/JR0131_35.19_CRITICAL_REVIEW_TRANSITIONAL_AGREEMENTS_REPORT_EXECUTIVE%20SUMMARY.pdf
Brayman, Kira et al. A review of transitional agreements in the UK. Zenodo, 2023, 174p.
https://zenodo.org/records/10787392
参考:
英・Jisc、オープンアクセス(OA)と転換契約に関するレビューを実施すると発表 [2023年08月24日]
https://current.ndl.go.jp/car/190780
英国初の“Read & Publish”契約となった2016年から2018年の“Springer Compact”試験契約に関する英・Jiscの評価(文献紹介) [2020年01月07日]
https://current.ndl.go.jp/car/39892
E2448 – 英・UKRIの新オープンアクセス(OA)ポリシー公開について
カレントアウェアネス-E No.425 2021.11.25
https://current.ndl.go.jp/e2448
CA1977 – 動向レビュー:学術雑誌の転換契約をめぐる動向 / 尾城孝一
カレントアウェアネス No.344 2020年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1977