CA917 – 主要国における国立図書館の将来構想:調査研究プロジェクト活動報告(5) / 村山隆雄

カレントアウェアネス
No.172 1993.12.20


CA917

主要国における国立図書館の将来構想
−調査研究プロジェクト活動報告 5)−

国立国会図書館の図書館研究所は,すでに3つの調査研究プロジェクトを発足させているが(CA836CA844CA856CA873参照),本年8月,新たに「主要国における国立図書館の将来構想」の調査プロジェクトを発足させた。

プロジェクトの目的は,各国の国立図書館の「戦略計画書」等を調査・分析し,将来計画策定に至る背景と各国が目指す国立図書館像の比較検討を通して,国立国会図書館の将来計画作成の一助とすることである。

調査にあたっては,組織・機能・サービスの再評価,図書館をとりまく技術の整備状況,情報政策における国立図書館の位置付け,計画の策定過程等に焦点を合わせていく。調査の対象は,米国・英国・フランス・ドイツ・オーストラリアの5カ国である。

(1)米国:ビリントン館長のもとで,一連の改革に取り組んでいる米国議会図書館は,昨年,「戦略計画1993-2000」を議会に提出した。西暦2000年に創立200年を迎える同館は,緊縮財政のもとで,より多くの人に世界一の蔵書へのアクセスを保証する電子時代にふさわしい「壁のない図書館」(CA838参照)を目指そうとしている。

(2)英国:1985年に,歳入を生むサービス開発のための第一次戦略計画を,1989年に新館移転と経営の見直しのための第二次戦略計画を発表した英国図書館は,本年,第三次戦略計画“For Scholarship, Research & Innovation-2000”を発表した。同館は,セント・パンクラスの新館の1996年の全面開館を目指して活動中である。

(3)フランス:1988年,ミッテラン大統領がフランス図書館(BDF)構想を打ち出し,現在,セーヌ河畔で工事が急ピッチで進められている(CA908参照)。既存の国立図書館(BN)との関係が注目されるところである。

(4)ドイツ:ドイツ統一後,フランクフルトのDeutsche BibliothekとライプチヒのDeutsche Buchereiとの間で,「東西ドイツ図書館統合計画」が進められている(CA726参照)。また,20年ぶりに「図書館連盟連合」(BDB)が“Bibliotheksplan 93”を発表した。ドイツの図書館計画は,分散化によって特徴づけられるが,全国的な情報政策におけるドイツ研究協会(DFG)の役割にも注目したい。

(5)オーストラリア:深刻な経済停滞にあって,もっとも効率的な図書館情報サービスの構造とプロセスの考慮を余儀なくされているオーストラリア国立図書館は,「オーストラリア図書館サミット1988」と同館のレビューを経て,1990年,“Sharing our future, preserving our past – National Library of Australia Strategic Plan 1990-95”を発表した。

調査期間は1年。調査結果は,順次リポート形式で報告し,プロジェクト最終報告書を作成する予定である。

村山隆雄(むらやまたかお)