カレントアウェアネス
No.172 1993.12.20
CA916
ISSNをめぐる動向
−アジア諸国のためのISSN研修から−
本年9月15日から17日にかけ,バンコクのタイ国立図書館において「アジア諸国のためのISSN(国際標準逐次刊行物番号)研修コース」が開催された。このコースは,ユネスコ,タイ国教育省,タイ国立図書館の三者が共催し,参加国としてアセアン五か国(インドネシア,マレーシア,フィリピン,シンガポール,タイ),中国,日本,ネパール,ラオス,ベトナム,スリランカの11か国が招請され,日本からは筆者が出席した。
このコースの目的として,1)アジア諸国のISSN利用の現状に関する最新の情報を得ること,2)ISDS(国際逐次刊行物データシステム)未加盟諸国にISSNの利用を促すこと,3)ISSNの利用に関してアジア諸国間の協力を強化することの三点が設定された。会議の運営は,講師として招聘されたISSNセンター長のサンチャゴ(Ms. Santiago)氏のISSN一般に関する講義の後,各国の参加者が自国の出版状況,ISSN付与の現状と問題点等を順次報告し,これに対する質疑応答を交えながらサンチャゴ氏が各国のレポートにコメントを加えるという形式で進められた。
情報の迅速な入手,多様な検索への対応,コスト軽減等の社会的経済的要請から,ISSNに関する書誌レコード作成を電算化しようとする志向が,このコースの底流をなしていた。
オートメ化の段階は各国まちまちではあるが,概ね次のように要約される。1)ISSNに関わるレコード作成・検索の機械化を自主開発(日本),2)ユネスコで開発されたソフトCDS/ISISをベースにシステムを構築(インドネシア,中国),3)上記のソフトのアプリケーションであるOSIRIS(Online Serials Information Registration and Inquiry System)に拠って機械化に移行(タイ,マレーシア),4)現行のマニュアル処理から機械化への移行を志向(フィリピン,シンガポール),5)納本制度を法的に整備しISSNに関わる作業をマニュアル・ベースで開始(スリランカ,ベトナム),6)納本の法的制度の確立とISSN国内センターの設立に尽力中(ネパール,ラオス)。
参加諸国のISSNの付与実績(1993年6月現在)は,日本21,445件,中国3,026件(9月時点で5,500件),インドネシア2,942件,シンガポール2,290件,フィリピン1,790件,マレーシア1,706件,タイ1,449件,ベトナム325件,スリランカ141件であり,ちなみに非参加国ではインド3,571件,韓国530件となっている。各国センターともISSN付与の拡大を図るべく広報には尽力しているものの,印刷表示漏れ,印刷ミス,改題誌紙への新規番号指示に対する出版者側の等閑視などに伴う苦労は共通のものであった。
新たな動向としては,1)検索・流通等におけるISSNの利用効率を高めるため,ISSNを数値として表示するにとどめず,ISSN対応のバーコードの積極的導入を促すこと,2)カレント誌紙に対するISSN付与が完了した場合,バック資料への遡及付与作業を進めること,3)紙以外の媒体の出版物に対してもISSNを付与すること,4)東南アジア地域センターのカバー範囲を他のアジア地域加盟国にまで拡大し,研修,スタッフ交流,技術的問題の検討などにおいて相互協力をめざすこと等が提起され,これらは提言(Recommendations)として採択された。
なお,本コースに先立つ9月13〜14日には,前述のソフトOSIRISを用いてISSNレコードの入力実習が行われ,また,コース中には検索のデモンストレーションがオブザーバーを含めた参会者に公開された。
笠井公男(かさいきみお)
Ref: Total number of records in the ISSN register.ISDS/NC/19(October 1993)