CA915 – 灰色から白色へ:科学技術分野の新サービス / 市古節子

カレントアウェアネス
No.172 1993.12.20


CA915

灰色から白色ヘ−科学技術分野の新サービス−

科学の研究・開発や文献検索に大きく貢献してくれそうな二次資料が,今年になって相次いで発売されている。

一つはInside Informationという名称で出された英国図書館文献供給センター(BLDSC)製作のCD-ROMで,逐次刊行物の目次情報サービスである。最初のディスクは本年4月に発売され,BLDSC所蔵の最も利用度の高い1万タイトルの逐次刊行物の10万頁にわたる目次から採録しており,この中には多数の会議録も含まれている。年間100万件の論文が累積され,月刊で年間使用料は1千ポンドである。データの作成は雑誌到着後数日以内,更にCD-ROM化は2〜6週間以内と,極めて短時日の内に作成される。

検索メニューその他はBoston Spa Serialsなど,BLDSCの他のCD-ROMと良く似ている(CA828参照)。さらに,Local Journal Ho1dingsというオプションにより,検索文献を自館が所蔵しているかどうかを見ることができる他,すべての文献について,BLDSCの文献配送サービスにより入手が保証されている。CD-ROMの他に,週刊の磁気テープ版も発売されている。

発売後半年を経るが,英国内は元より,米国,アジアなど全世界的に利用されている。「この成功が第2作につながった」とDocument Supply News誌は伝え,Inside Conferenceの製作を発表した。これはBLDSCが年間に収集する1万5千件の会議録に掲載されるすべての発表ペーパーを網羅する書誌データベースである。近々製作に着手し,最初の製品は1994年中に市販される予定である。

会議録は代表的な灰色文献であり,BLDSCのコレクションは定評がある。年間1万8千件を新規に受け入れ,この内約25%が商業ルートを通らないものであるとされている。会議録は新発見や新開発をいち早く収録しており,この貴重な情報がCD-ROMの出現により容易に入手できることになれば,その影響は大きく,灰色がどこまで白色化するか期待がもてるところである。

最後はTech Linkという月刊の環境関係の最新情報誌である。米国技術情報サービス(NTIS)は米国商務省の付属機関で,その運用コストのすべてをテクニカル・レポート等の販売でまかなっているのは知られている。この2,3年組織やサービスの大規模な改革を進めており,その一つとしてジョイントベンチャーとの契約により新しい商品開発を試みている。Tech Linkはその産物で,Compendex Plus(Engineering Information Inc. (EI)のデータベース)とNTISのデータベースをドッキングさせたものである。本年1月より刊行されAir Pollution, Transportation Safetyなど主題別に5シリーズが創刊された。各誌の中は書誌事項と抄録が主題順に配列されており,研究者等には欠かせない最新情報のブラウジングができる。原文献の入手はNTISのものは注文番号で,その他のものはEIへ直接申し込むことができる。

EIは5千点をこえる雑誌,会議録,テクニカル・レポートを毎年網羅し,17万件をこえる抄録と32万件の書誌データを作成し,NTISも年間7万件をこえるテクニカル・レポート等内外の灰色文献を収集してデータベースを作成している。双方の豊富なデータをドッキングさせて,多数の灰色文献を含む最新情報を利用しやすいよう主題別にコンパクトにまとめたこのような情報誌が注目されるところである。

市古節子(いちこせつこ)

Ref: Document Supply News (38); (39), 1993
Tech Link Publicationシリーズ