カレントアウェアネス
No.266 2001.10.20
CA1427
香港中央図書館の開館
2001年5月17日,香港中央図書館が開館した。同館は,ショッピング・レストラン街として有名な,香港島の銅鑼湾に面したヴィクトリア公園に隣接する場所に建設された。1993年に建設計画が決定し,その後8年を経て,総工費約9億5,000万香港ドル(約142億5,000万円)をかけ,ようやく開館の日を迎えたのである。
香港中央図書館のスローガンは,「情報空間を拡張し,自学自習の新紀元に邁進する」である。同館は,香港の公共図書館の中心としての機能を果たすとともに,市民が同館の施設を活用して生涯学習の理想を実現できるようにすることを大きな目標としている。開館前日には,香港特区行政長官董建華氏が出席して,開幕式典が挙行された。董長官は,挨拶の中で,同館を世界的レベルに発展させ,香港の教育改革を支援し,香港経済を知識本位のモデルへと変換することを援助するよう要望した。
香港中央図書館は,地上11階,地下1階建て,総面積3万3,800平方メートル,現在の所蔵資料は120万点で,200万点収蔵可能である。閲覧席は約2,000席あり,「壁のない図書館」の建築思想に基づき,内部は広々とした空間となっている。職員数は約200名である。
休館日は旧暦正月の1〜3日やクリスマスなどの年7日間であり,他の日はすべて開館する。開館時間は午前10時から午後9時まで(水曜日は午後1時から,土・日曜日・祝日は午後6時まで)となっている。
香港中央図書館では,情報機器類およびコンテンツの整備に力を注ぎ,館内各所にOPAC端末を設置し,蔵書検索ができるようにしている。また,これとは別に「マルチメディア・インフォメーション・システム」と呼ぶ独自開発のシステムを設け,DVD,CD-ROM等の電子媒体,同館所蔵の古典籍のデジタル画像等を閲覧することができる。
各階の配置を簡単に紹介しよう。1階にはレファレンスや貸出・返却のカウンターがある。2階は児童図書館,おもちゃ図書館(注),児童マルチメディアセンター,3階は成人図書館が置かれている。4階・5階には地図図書館,新聞雑誌閲覧室,6階には青少年図書館,語学学習室,デジタル図書館などがある。8階・9階の中央参考図書館には,一般資料(辞典等),香港関係資料,科学技術・商業金融・人文・国際機関・「香港基本法」関係資料のコーナーがある。また,170台のパソコンを設置して,資料検索,インターネット接続,CD-ROM閲覧等に供している。香港出身の作家の手稿等を集めた文学資料室もある。10階の芸術資料センターでは,音楽・美術関係の資料を提供するとともに,音楽練習室が設置されていて,市民の利用に供することになっている。他に書庫や展示室がある。
当然ながら,香港最大の図書館に対する市民の期待は大きい。開館初日には市民が大挙して押しかけ,入館者数は5万人強に達した。館内はたいへんな喧騒状態となり,本の「争奪戦」も繰り広げられた。その後も,入館者数は予想を大幅に上回っている。大いなる期待を背負って出発した香港中央図書館の今後が注目される。
鎌田 文彦(かまたふみひこ)
(注)8歳以下の幼児・児童を対象に,収集した教育玩具で遊べるよう専門のコーナーを設けている。
Ref: 明報 2001.5.7〜6.17
大公報 2001.5.15〜5.21
香港中央図書館(英文版)[http://www.hkpl.gov.hk/hkcl/eng/main.htm] (last access 2001. 8. 31)