CA1430 – 図書館とコレクターの関係−LC「貴重書フォーラム」開催− / 上田由紀美

カレントアウェアネス
No.266 2001.10.20


CA1430

図書館とコレクターの関係―LC「貴重書フォーラム」開催―

今年4月,米国議会図書館(LC)の貴重書・特別コレクション部(Rare Book and Special Collection Division)とセンター・フォー・ザ・ブック(Center for the Book)の主催による第1回「貴重書フォーラム(Rare Book Forum)」が開催された。テーマは「図書館とコレクターの関係」である。このフォーラムには全米から200人以上の図書館員,コレクター,書籍商が参加し,盛況を呈した。

19世紀末以降,米国では蓄積した莫大な富の一部を書物の収集に振り向けて,貴重書のコレクションを持つ富豪が出現した。彼らの中には,モーガン(J.P. Morgan)氏やハンティントン(H.E. Huntington)氏のように,自ら図書館を作る人々もいる一方で,多くの人々は貴重なコレクションを図書館に寄贈してきた。これらの寄贈書が図書館の貴重書コレクションの基礎となり,以降の収集方針を決めることも多い。個人コレクションは図書館の貴重書コレクションに不可欠な存在であり,貴重書を扱う図書館員がコレクターのアドバイザーを務めるなど,コレクターと密接に結びついてきた。

しかし,現在,図書館とコレクターの結びつきが弱まっているとフォーラムのメンバーは警告する。原因は図書館の「忙しさ」だという。利用者の情報検索要求の増大につれ,図書館が既蔵コレクションのデータ整備に忙殺され,個人のコレクションへ関心を向ける余裕を失ってきたというのである。代わって書籍商がコレクターへのアドバイスを行うようになったとも指摘されている。一方,予算削減と貴重書価格の高騰によって図書館の購入も減り,総体として貴重書流通の場における図書館の地位の低下が認められる。

これからもコレクターは図書館に寄贈してくれるだろうか。そのためには図書館はもっと努力してコレクターと接触し,彼らを「育て」ていかなければならない,とフォーラムは呼びかけている。

上田 由紀美(うえだゆきみ)

Ref: Simone, D. de. Rare Book Forum: relationship of private collectors, libraries discussed. LC Inf Bull 60(6) 140-141, 148, 2001