CA787 – LC、蔵書を地方図書館にオンラインで開放 / 中林隆明

カレントアウェアネス
No.150 1992.02.20


CA787

LC,蔵書を地方図書館にオンラインで開放

米国議会図書館(LC)はその作成するデータベースを広く全米に開放,オンラインで提供することを目的として,33の州立図書館を対象に,1991年1月から2カ年の実験プロジェクト,LC Directを実施している。同館のビリントン館長によると,約百年前にカーネギーが米国公共図書館建設に多くの寄付をして,それによって国民大衆への知識普及に大きな貢献をしたひそみに倣って,米国のより良い未来建設に向けて,一歩を踏み出そうとするものである。このプロジェクトは,1989年のパイロット・プロジェクトに基づくもので,米国内の14機関を選び,参加館の反応を探ることから出発した。カリフォルニア州立図書館(サクラメント)のケースで言うと,1989年のサンフランシスコ大地震の際の災害復旧には,LCデータベースのオンライン利用が預って力を発揮したとの由である。

1989パイロット・プロジェクトは,遠隔オンライン図書館利用者パイロット(ROLLUP)プロジェクトの名で知られるもので,LCからは議会調査局,一般閲覧室課,著作権局等のレファレンス部門と機械化を担当する情報技術サービス部の専門家13名も加わり,LC情報システム(LOCIS)の遠隔地からのオンライン・アクセスの可能性を探った。プロジェクトは,同年の9月,2日間の研修を終えて翌10月から翌年の5月まで実施され,実験結果に基づいて,50州全ての州立図書館が参加する新たな実験プロジェクトを発足することが勧告された。具体的には,オンライン目録データ管理システム(MUMS),及びオンライン情報検索システム(SCORPIO)を参加館に提供する。

ところで,LC Directで提供するデータの中には,MARCテープ,CD-ROM,印刷物,マイクロ・フィッシュ等の形で以前から提供して来たものもある。それ以外にも,資料貸出し,レファレンス,視覚障害者サービス,読書推進センター等のサービスがあり,いずれも国内外から高く評価されている。これらに加えて,世界最大の文献センターであるLCが全米に対しオンライン・サービスを行うことは,現状ではまだ33館にとどまるとは言え,極めて意義深い。CA676で紹介したAmerican Memory Projectでも,当面はCD-ROMで史料を提供するが,将来はLC Directの拡大版に含めて,オンラインで提供することを目指しているとのことである。

中林隆明(なかばやしたかあき)

Ref: Billington, James H. Library of Congress to open collections to local libraries in electronic access plans. Am. Libr. 22 (8) 706-709, 1991
Low, Kathleen. The Library of Congress Remote Online Library User Pilot Project: the California State Library experience. Ref. Libr. (33) 125-141, 1991
Library and Book Trade Almanac. 36th ed. R.R.Bowker, 1991. p.120-135
SLA Board praises Library of Congress Online Pilot Project. LC Inf. Bull. 48 (50) 434, 1989.12.11
Library's “Online to the Nation” Pilot Project begins. LC Inf. Bull. 48 (43) 375, 1989.10.23