CA676 – LCがニューメディア化史料のプロデューサーに / 坂本博

カレントアウェアネス
No.131 1990.07.20


CA676

LCがニューメディア化史料のプロデューサーに

米国議会図書館(LC)が自館のコレクションの中からアメリカ史を彩る史料を編集し,電子媒体(光ディスク)で「復刻」して頒布するAmerican Memory Projectを公表した。このAMPは,LCのコレクション中のアメリカ史に関する生資料(写真,手稿,楽譜,映画,録音,図書)を時代,地域等ごとにまとめ,来館利用を待つのではなく,積極的にアメリカ中に広めようというものである。第一段階として,1990-95年に年2〜3件のペースで15-20件の製品を作成する。最初のものは仮に“America at the start of a new century, 1880-1920”と名付けられ,1992年完成予定である。これに南北戦争,第一次大戦から第二次大戦までの二つが続き,これらについては3年分の補助金を獲得している。

AMPは,LCはアメリカの記録であり,それを全国に広める義務があるというビリントン館長の方針の第一歩として計画された。また同館長は,複合媒体化されたAMPはコンピュータ世代のユーザーにアピールすると同時に,新たな利用層を開拓するであろうとも言っている。

収録対象資料は各媒体にわたるが,LC所蔵のユニークなものを中心とする。読書にはコンピュータの画面よりも手元の図書の方が好まれることから,叙述的な小説や歴史書など他の図書館にもありそうな図書の収録は最小限に留める。また資料を提供することが目的であるため,中身の校訂や書き足しなどはしない。ただし収録資料の内容や由来についての説明は付加する。マルチメディアではあるが資料の合集にすぎないことが,ハイパーテキストと称していない理由であろう。

最初の製品が完成するまでにシステムのプロトタイプを作り,ユーザー調査や実験・デモを行う予定である。現在はテクストや音声用のCD-ROMと画像用のLDを組合わせた形で開発が進められているが,新技術の成果(例えばインタラクティブCD-ROM)などを随時とり入れて改良する予定である。ただし,図書館や学校に普及している機器で使えるものという制約がある。Information Bulletinに図入りで紹介されているAMPワークステーションは,マイコン,CD-ROMドライブ,LDプレイヤー,ディスプレイ,ヘッドホン,プリンターから成っている。目録モードでMARCやテキストサーチ検索を行い,利用モードで資料を利用し,これが面白いのだがワークモードで資料を取りこんだのち,ワープロやイメージ編集をしてデスクトップ・パブリッシングの形で出力できるようになっている。学生は,AMPだけでレポート作成ができてしまうのである。

製品は,光ディスク数十枚から成るセットの他資料単位の細かな販売も考えている。頒布には民間セクターを利用するつもりだが,民間セクターには,AMPを素材に加工を行った「異版」の製作・普及も期待されている。

AMPには,大部分が学校図書館である11万5千の図書館を有望な市場と見た関連機器メーカー(アップル,パイオニア等)や幾つかの財団が援助・協力を行っている。教育界ではルーカスフィルムや全米地理学協会などが教育用対話型ハイパーメディアを提供しているが,LCほど豊富な資料を提供できる所は有り得ない。

こういう事業を行う場合に気を付けなければならないのは著作権だが,これについてLCは,性質上期限の切れているものが多いはずとしつつも正式の手続きを行うとし,著作権者に連絡がとれない場合の対策を検討し始めた。

坂本 博

Ref. The American Memory Project: sharing unique collections electronically.
Library of Congress Information Bulletin 49 (5) 83-87, 1990.
Bacon, Kenneth H. Strolling through libraries of the future. Wall Street Journal 1990. 2. 23, B1, B8.