CA759 – ハイテク図書館の資金源―Apple社の図書館助成活動― / 豊田透

カレントアウェアネス
No.144 1991.08.20


CA759

ハイテク図書館の資金源−Apple社の図書館助成活動−

テクノロジーの導入による図書館サービス拡大の可能性は大きい。それは図書館側が期待を寄せるところであるが,コンピュータ産業の側にとっても同様であり,両者の協力によって,それまで夢であったようなサービスが行なえる可能性を秘めている。そんな夢の実現に向けて,マッキントッシュでおなじみのアップル社は,図書館を対象としたALOT(Apple Library of Tomorrow)という助成制度を設けた。

この制度は,ハイテクを駆使した夢のある計画を図書館側から募集し,それに対してアップル社がマシンを提供して実現を援助する,というものである。あくまでアップル社のマシンで動くシステムを作ることは当然だが,制度の主旨としては,図書館サービスヘのテクノロジー導入の優れた実例を示し,その成果を他の図書館へも広げていくことにある。そのため,当選者は年1回のALOT会議で成果を報告することになっている。

1989年には1,350件の応募総数に対して12件,1990年はやや宣伝を控えたためか500件に減少し,13件が当選している。その中には,LCの“The American Memory”プロジェクト(CA676参照)も入っており,マルチメディアヘの対応とユーザー・インタフェースのよさでは定評のある同社のコンピュータだけに,LCが所有する膨大な音声・画像資料のデジタル化というこのプロジェクトヘの貢献も大きいことが期待されている。その他には,やはり歴史資料のマルチメディア化を計画しているアラスカ大学や,学校図書館にコンピュータを導入して広く一般公開し,地域住民の情報リテラシー向上に役立てているケース,逆に,利用者は限られているが独創的なオンライン・システムを構築しているケースなどがある。

この制度は“Fund your dream”をモットーにしているが,アップル社が「夢」のすべてに渡って援助するわけではない。あくまでもハードウェアとソフトウェアの提供に限られている。したがって,個々のプロジェクトに必要な人員や経費は,図書館の負担となる。そのため,ALOTに当選してプロジェクトを開始したものの,その継続にあたって困難に直面してしまったケースもあるようである。

豊田 透(とよだとおる)

Ref: Gillespie, Thom. High-tech libraries of tomorrow-today. Libr. J. 116 (2) 46-49, 1991