カレントアウェアネス
No.145 1991.09.20
CA763
フランス革命期の画像資料をBNでビデオディスク化
西欧美術の中心地,また写真や映画の発祥の地でもあるフランスには,画像・映像コレクションに関して一種偏愛とも言える熱心さがあるが,当然それに呼応してアート・ドキュメンテーションの先進国でもある。その中で,(やや時期を逸した話題であるが)フランス革命200年を機として実施された,フランス国立図書館(BN)による画像資料のビデオディスク化を紹介する。これは既報のLCのAMP(CA676)に先立っていた計画である。
このプロジェクトはそもそもは1989年の革命200年記念が発端であるが,本来は記念プロジェクトとして計画されたわけではない。むしろ,200年を控えてBNの革命関連資料への需要が増えることを予想し,従来よりもアクセスしやすいように,コレクションの抜本的な再編成をする必要があったためである。まず1980年代前半に版画・写真部の所蔵資料を中心とした6〜8万の関連資料から36,000点をピックアップした上で,プロジェクトの方針を固めた。その主な点は,対象をBNの資料に限定すること,形態はビデオディスクとすること,年代は1787年から99年までとすること,併せて書誌データベースを作成することなどである。当初はBNのみの計画であったが,同様に革命資料集の出版を計画していたパーガモン社や文化省も加わり(資金分担は順に56%,24%,12%となっている),1987年に本格的にスタートした。
BNにおける資料の選定・目録作成及び機械入力と並行し,88年4月からコダック・パテ社による原資料の写真撮影が開始された。これが4カ月で終了すると,引き続き資料群の配列等の構成が念入りに検討され,ビデオディスクヘのメディア変換が実施された。作業はUCP社によって行なわれ,これは89年2月に完了した。製品の生産はPDO社によって行なわれた。一方,ビデオディスク及びデータベースを利用するためのソフトウェアの開発は,88年8月よりPUSS社により行なわれていたが,89年の当面のデモンストレーションなどには間に合ったものの,詳細設計は予定をオーバーし,開発もTribun社に移行して,90年にようやく完成した。
こうして630万フランをかけた“Images de la Revolution Francaise”というビデオディスクが完成したわけであるが,BNにとっては初のビデオディスク製品ということで,頒布に当たってかなり工夫をしたようである。すなわち,1,000枚を採算点に,頒布価格を原価なみの低さに抑え,国内外に2万部のカラー・パンフレットを配布し,IFLAを始めとする様々な催しの場において積極的なデモンストレーションを展開した。ちなみに,価格はディスクのみで2700F,目録3巻込みで5100F,データベース込みの場合は6100F,フルセットで7000Fとなっている(1990年2月現在)。関係者によると,このディスクの売れ行きはプロモーションの割には今ひとつ芳しくないそうである。その原因として,文化・研究・教育の分野でAV資料に対する興味が十分でないこと,ビデオディスク製品が身近な存在になっていないこと,などを挙げている。
豊田 透(とよだとおる)
Ref: Bruckmann, Denis, Le videodisque Images de la Revolution Francaise. BBF, 35 (2) 122-135, 1990