CA764 – 中国図書館界の機械化の現状 / 鎌田文彦

カレントアウェアネス
No.145 1991.09.20


CA764

中国図書館界の機械化の現状

中国の図書館界における機械化の進展はめざましいものがある。しかし,様々な問題も抱えているようである。ここでは,『図書情報工作』に掲載された二つの論文により,その現状と問題点を紹介してみたい。

ここ10年ほどの間に,中国における図書情報の機械化は長足の進歩を遂げた。それは,次のような面に現れている。

1. 機械設備の導入

中国の科学技術・情報関係の組織は,現在981台のコンピュータ,57台の中小型コンピュータ,320台の端末機を備えている。また,複写機,マイクロ・リーダーなどの設備も充実しつつある。

2. コンピュータによる情報検索

科学技術情報検索は,第六次五か年計画の重点研究項目に指定されており,国家レベルで研究開発が進められている。国外から導入したデータベースは現在52種あり,CD-ROMも最近100セットほど導入された。さらに,全国の40の都市に,端末機71台が設置され,世界のデータベース・サービス11種と接続されている。これらの設備により,迅速な情報検索サービスが可能となった。

3. ソフトの開発

漢字処理,中国語処理のためのソフトは,すでに実用化の段階に入っており,比較的大規模なデータベース12種が国内で作られている。

4. パソコンの普及

例えば,1988年に深■[■は土偏に川]図書館が中心となって,多数の部門が参加するネットワーク「図書館連合システム」が形成された。図書のコンピュータ管理が現実のものとなりつつある。

5. 情報技術の開発と応用

機械翻訳,中国語雑誌記事索引,自動索引などの技術開発には,かなりの進展が見られる。

6. 人員の養成

図書館の機械化を担う専門的な人員が徐々に養成されつつある。

しかし,次のような問題点も指摘されている。

1. 設備の配置について

統一的な計画がないままに,各組織が「機械化のための機械化」をはかる結果,人的・物的・財的資源の浪費を産んでいる。例えば,国際データベースに連結する端末機の配置は不合理であり,利用率は低い。端末機は華東地区に偏っており,特に北京には15台が集中している。一部の組織はこれを有効に活用しているが,大多数は利用率が低く,開店休業状態のものもある。

2. 機械化の前提条件の不備

機械化により検索能力が向上したとしても,それを支える諸条件が整っていないことにより様々な問題が生じている。例えば,検索文献を国内で入手できる割合は40〜50%にすぎない。また,文献の標準化が進まず,文献処理に関する多数の基準が国内で併存している結果,全国的な文献管理に混乱が生じている。

以上のような現状を踏まえて,筆者は,全国的な合理的な計画を立てて図書館機械化を進めること,中国の国情を踏まえて経済効率を考慮しながら機械化を進めること,利用者の要求に応えると共に利用者教育を強化すること,機械化を担う図書館員の訓練を強化することなどを提案している。

一方,前述の深■[■は土偏に川]の場合のように,機械化のメリットを生かした図書館間のネットワーク作り進んでいるとの報告もある。例えば,中国科学院では,中央の文献情報センターを中心として,地方の文献情報センター4か所,中国科学院に所属する全国の研究所の図書情報室122か所,学校・工場・出版社の図書室・資料室15か所がネットワークを形成しており,相互に連絡を取りながら,購入文献の調整,総合目録の作成,資料の相互利用,情報サービス,人員の養成などを行っている。また,最新の技術を駆使して文献データベースを作成している。現在のところ情報科学,化学,生物学,光学,環境問題に関するデータベースが完成しており,物理学,天文学,中国国土資源情報のデータベースも計画中である。

鎌田文彦(かまたふみひこ)

Ref: 丁衛〔我が国の図書情報自動化事業に関する考察〕図書情報工作1991 (l) 1-6, 1991. 2
中国科学院文献情報センター〔協力を強化し,全体的な建設をはかろう〕図書情報工作1991 (1) 31-35, 1991. 2