CA796 – コロンビア大学保存教育コースの受入先が決定 / 吉本恵子

カレントアウェアネス
No.151 1992.03.20

 

CA796

コロンビア大学保存教育コースの受入先が決定

すでに本誌にも紹介されているように,コロンビア大学図書館学校の閉鎖が関心を呼んでいる(CA702)。同校の今後は未定であるが,そのうちの「保存教育コース」(1981年開設)(注1)は,1992年7月にテキサス大学オースティン校の図書館情報大学院が引き受けることに決定した。

大学院レベルの図書館資料保存教育コースとして,合衆国内はもとより,国際的にもユニークな存在であった同コースは,この危機をむしろ一つのチャンスととらえ,最も有利な条件の受入先を選んだようである。申し出のあった8機関を実地調査したのち,昨年5月最終決定を下す専門家委員会が組織され,候補を3機関に絞った。そして10月には,テキサス大学オースティン校を最適な機関として選んだものである。

シェルドン教授(図書館情報大学院委員長)は,保存の分野で定評のある同コースを引き受けるのは喜ばしいと述べるとともに,これによって同大学院が強力になるだけではなく,学内機関のニーズに応えることができるだろうと語った。一方,ハリス教授(保存教育コース主任)も,同大学院が総合的に見て最も条件が整っていると述べている。

テキサス大学オースティン校図書館情報大学院では,すでに保存管理者のためのコースが開設されており,また,同大学(注2)はハリーランサム記念人文科学研究センターと総合図書館の双方に保存部がある。人文科学研究センターの保存部は資料の保存技術や教育・研究において国際的に認められており,総合図書館の保存部門も1980年代初頭以来続けられてきたものである。また,保存担当職員数(22名)でも他の同様の機関と比べて充実しており,これらの点が選定に当たって有利に働いたものと思われる。図書館・文書館資料保存教育コースと名前を変えた同コースはこれまでにも増して財源を充実させ,これまでの伝統の蓄積の上に,資料保存教育の中心となる次代のリーダーの養成をめざしている。

同コースの移転に当たり,その教育に中断があってはならないことから,早くも今年9月には保存管理コースが開始され,また,資料保存技術者養成コースは,1993年度に開始される予定である。

吉本恵子(よしもとけいこ)

(注1) 過去10年の保存管理コース卒業生は約40名,保存技術コース卒業生は約20名。
(注2) 総合図書館の蔵書数は600万冊,ハリーランサム記念人文科学研究センターは,図書80万冊,手稿900万点を所蔵している。

Ref: Press Release, Columbia University in the City of New York. 1991.12.6
Harris, Carolyn. Education for preservation administration. Conserv. Adm. News (42) 8-9, 24; (43) 4-5, 29, 1990