カレントアウェアネス
No.151 1992.03.20
CA795
(件名+キーワード)×OPAC=?
1. 主標目−細目=?
昨年5月,CLR(米国図書館振興財団)の助成により,LCSH(米国議会図書館件名標目表)の「細目に関する会議」が以下の目的で開催された。
- 件名作業の効率化
- 共同目録作業の向上と促進
- OPAC(オンライン目録)における主題アクセスの改善
図書館の機械化,検索機能の向上,共同目録作業への国立図書館の関与,という状況下での会議ゆえ,新たな主題検索の可能性が期待されてもよさそうだが,細目の使用は継続するという大前提があり,議題も小粒のものばかり。
それでも,採択された勧告によれば,LCSHシステムの運用は簡素化され,より明確なものになるとのことである。主なものを示すと,
1)細目の使用は,対象資料毎に,必要に応じて行うこと。細目の列挙順序は,原則として「普通件名−地理区分−時代区分−形式区分」とすること。
2)典拠ファイル中に,普通件名のレコードをも格納すること。LCは,各図書館と協同して全国件名典拠ファイル計画を進めること。
3)普通件名の時代区分は,対象資料の発行時期とは無関係に,当該資料の内容に即して行うこと。LCは時代区分における年号(および年号の範囲)の使用について調査を行うこと。データベース作成機関/書誌ユーティリティはレンジ検索の可能性を追及すること。
4)細目のコード化,形式区分のサブフィールド化について調査を行うこと。
5)間接地理区分の慣行は,現状どおり維持すること。
2. キーワード+?
USMARCには,LCSHが全く付与されていないMLC(簡略整理)レコードが含まれている(CA666参照)。MLCレコードでは従来,主題アクセスは殆ど期待できなかったが,目録作業の優先順位見直し(CA784参照)と同時に行われた入力レベルの見直しによって,これらのレコードへのキーワード付与作業が開始されている。概略は以下のとおり。
1)英語以外の資料:タイトル中から主題を表現している語句を抽出し,英語に翻訳する
2)タイトルが主題と無関係か関連性が曖昧な場合(英語,英語以外を問わず):目次,序文,索引等,当該資料にある適切な語句を抽出する
3)抽出した語句は,件名のように統制することはせず,そのままの形でMARCレコードのフィールド653に収め,通常の件名標目とは区別しておく(普通件名:650,人名件名:600等)
このようなキーワードによる検索は,件名標目からの検索とは異なり,精密性に欠け,検索漏れも予想される。しかし,件名標目に不慣れな利用者にとっては,思い付いた語句で検索すれば何かしら捜し出せる可能性が高いため,簡略整理された資料群へのアプローチのほうが容易になることも考えられる。
一方,データの利用可能性は検索システム次第であり,例えば,上記のMLCレコードへの主題アクセスは,現在のところ国立国会図書館(NDL)の検索システムNORENのUSMCファイルでは不可能である。これは主題検索の対象として分類と件名のフィールドのみが想定されていることによる。
3. NDLSH×BSH=?
昨年11月にNDLで開催された第26回「大学図書館長との懇談会」においては,JAPAN/MARCの充実とともに,NDLSH(国立国会図書館件名標目表)の改善が要望されている。一方,BSH(基本件名標目表)の改訂作業も着実に進行中のようである。
しかし,OPACにおける主題検索がようやく普及しつつある環境下,「件名」を改善すれば問題は解決されるという状況ではない(CA614,CA751参照)。件名標目/分類記号のみを主題検索の対象としたり,目録作業分担制度の墨守(記述/標目/主題),データ作成者と利用者の乖離が続いている限り,OPACに限らずとも,図書館資料へのアクセスは十分とはいえないままではないだろうか。
横山幸雄(よこやまゆきお)
Ref: Library of Congress subject subdivisions conference preliminary report. Cat. Serv. Bull. (54) 2-5, 1991.
Cataloging priorities and level of cataloging. Cat. Serv. Bull. (51) 3-7, 1991.
Lancaster, F.W. et al. Identifying barriers to effective subject access in library catalogs. Libr. Resour. Tech. Serv. 35 (4) 377-391, 1991.