CA751 – OPACの主題検索 / 大塚奈奈絵

カレントアウェアネス
No.143 1991.07.20


CA751

0PACの主題検索

イギリスの大学図書館へのOPAC(利用者用オンライン目録)の普及は,過去10年間で飛躍的に増大した。1988年には,大学図書館の50%にOPACが導入され,1990年6月までにJANET(the Joint Academic Network)により,58のOPACがアクセスできるようになった。

また,公共図書館でのOPACの普及は,1990年の初めまでに86館(約50%)と言われている。

こうしたOPACでの主題検索は,大学図書館,公共図書館ともに,分類番号による検索が主流を占め,件名をアクセス・ポイントとしているのは大学図書館の4分の1,公共図書館の半数にすぎない。しかしながら,OPACで分類番号を用いて主題検索をするためには,探している主題の分類番号を事前に調べておかなければならない。従って,分類番号による検索は既知事項の検索ということになり,本来の意味でのOPACによる主題検索とは言い難い。因みに,イギリスの公共図書館のOPACで,件名を(構成する語から)キーワード・アクセスできるのは,わずか2館のみであるという。検索方法はシステムによって様々で,ブール演算(AND,OR,NOT)を使用できるシステムや,AND演算のみのシステム,自動的に重み付けをするシステムなどがある。

イギリスのマンチェスター・ポリテクニックでは,図書館情報学科の学生を対象として,大学図書館でのOPACによる主題検索の問題点を探るためのテストを実施した。テストは,フロッピーディスクに落とした検索処理過程を分析する方法で行なわれ,この結果,主題検索に関わる問題点として次の4点が指摘された。

第1点は,OPACの画面上に表われる指示の問題である。例えば,スペリングが正確なのにヒットするレコードがない場合,利用者には,その主題の文献が目録中に存在しないのか,あるいは他の件名で索引されているのかの判断がつかない。検索の際にメニュー上での選択肢が多すぎてどれを選んだらよいかわからない等である。

第2の問題点は,検索タームの問題である。利用者にとって,件名を使用して検索することはかなり難しく,一方,イギリスにはオンライン・シソーラスをもつシステムはまだない。

第3の問題は,検索手法の改良の必要性である。例えば,ある件名で非常に多くの文献がヒットした場合,有効な絞りこみの手段があるシステムは,現在までのところLIBERTASのみである。

第4の問題は,件名記述の不十分さである。適切な件名が付与されていないことで検索もれが生じる事実は,極言すれば,その図書に到達できない情報障壁があるということである。

これらの4つの問題点には,OPACの機械的・システム的な問題と,図書館目録の主題検索機能の構造的問題が含まれている。前者については,より優秀なインターフェイス,検索し易い命令語,明瞭な指示システムなどの開発で将来的に解決される問題である。一方,後者は既存の分類と件名ではOPACでの主題検索の要求を満たしきれないという現実を示唆しており,図書館にとってはより大きな問題といえる。実際アメリカでは,かなり以前から,OPACの導入によって主題検索が増加することや,件名標目表の問題点が指摘されていた(CA444,CA614参照)。最近,LCとOCLCが開始したパイロットプロジェクトでは,大人むけフィクションを主題でアクセスできるようにすることを計画している。OPACの時代の到来によって,件名標目表の抱える課題は非常に大きいといえよう。

大塚奈奈絵(おおつかななえ)

Ref: Slack, Frances et al. Subject searching on British OPACS. Library Review 39 (6) 41-49, 1990.
上田修一ほか オンライン閲覧用目録(OPAC):米国図書館振興財団(CLR)の調査を中心に.大学図書館研究 25, 1-12, 1984.
Library,OCLC to begin pilot project. LC Information Bulletin 1991. 3. 11