CA750 – LCMRCRRにおけるレファレンス・サービス――試行結果―― / 竹田幸弘

カレントアウェアネス
No.143 1991.07.20


CA750

LC MRCRRにおけるレファレンス・サービス−試行結果−

米国議会図書館(LC)では,1988年7月から一年間,機械可読資料閲覧室(Machine-Readable Collections Reading Room以下,MRCRRとする)を試験的に開設した。これは,フロッピー・ディスク,コンパクト・ディスク,ビデオ・ディスク等に記録されているデータベースやパソコン・ソフトなどの機械可読資料を収集,整理し,利用者に提供する体制を整備しようとする総合的な計画の一部として行なわれたものである。

LCでは,1980年代初期より機械可読資料を収集してきたが,MRCRRの設置によって,初めて利用に供された。MRCRRには,5台のパソコンが据えられ,ビデオ・プレーヤー,モニター,CD-ROMドライバー,プリンターが接続された。パソコン・ソフトの利用は研究目的に限られ,ソフトを使ってデータを処理したり文書を作成することはできない。一方,CD-ROMなどのデータベースの検索は自由である。

MRCRRは1人の機械専門家と3人のレファレンス・ライブラリアンによって運営され,レファレンス・ライブラリアンはレファレンスのみならず,機械可読資料収集のガイドライン作成,書誌記述方法の確立,サービス方針,保管方法の確立の仕事にも携わった。

MRCRRのコア・コレクションとして購入した資料は,40以上のマイコン・プログラムのコピー,およびCD-ROM形態の百科事典,索引類であった。また,機械可読資料のみならず,冊子形態の参考図書,マニュアル類も収集している。

収集した機械可読資料はSpecial Materials Cataloging DivisionがMRCRRのスタッフの助けを借りてマイコンで整理し,オンライン,冊子の両方で検索可能となっている。

開設当初より明らかになったのは,機械可読資料についてのレファレンス・サービスには,(1) ハード,ソフトについての知識,(2) 機械可読資料と冊子体資料の両方のコレクションの構築,(3) レファレンス・サービスについての新たな研修,経験,知識が必要とされているということである。

MRCRRの3人のスタッフは,いずれも経験を積んでおり,コンピュータについても学んだことがあるが,日々の業務を円滑に処理するには,CD-ROM等の知識が新たに必要になった。また,MRCRRの利用者はコンピュータの知識があり,質問の内容も高度である。例えば,何らかの情報を求めるというよりも,ソフトの機能そのものに関心をもち,質問する。そうした場合,レファレンス・ライブラリアンは利用者と一緒になって端末に向かい,ソフトの機能をきわめるのである。すなわち,利用者に対する案内をしながら,レファレンス・ライブラリアンもともにソフトについての研鑚を積んでいるのである。

また,CD-ROMの場合は収録範囲について質問されることが多い。

従来のレファレンスにおける利用指導,及び機械可読資料についても画面等をめぐる利用指導についての研究はある。しかし,ソフトの使い方や検索機能に関する利用指導について書かれたものは非常に少ない。MRCRRの試行結果から,機械可読資料を前提とした場合,レファレンス・ライブラリアンにはインストラクター的役割も要求されており,冊子体の場合より一層多くの利用指導が必要とされていると言えよう。

竹田幸弘(たけだゆきひろ)

Ref: Kimball, John, Jr. et al. Providing reference assistance for machine-readable materials : The Library of Congress completes a one-year pilot. The Reference Librarian (31) 31-38, 1990.