カレントアウェアネス
No.163 1993.03.20
CA866
ディスプレイされたレコード中の用語でそのまま検索できる
−Dissertation Abstracts OndiscのSideways Search−
情報検索において検索結果を見た利用者のうちかなりの部分が検索語を変更して再検索を欲し,再検索で使用される検索語はより特定的(specific)になりがちであることが知られている1)。通常の図書の検索でも,詳細表示画面中の同一件名標目,書名キーワード,著者,シリーズ等で再度検索したくなることはしばしば経験するところである。ところが,現在のメニュー選択(誘導)式のOPAC,CDPACでは,そうした場合には検索画面に戻って検索語を入力しなければならず,しかも検索画面では検索したい用語は画面から消えてしまう。
米国UMI社のDissertation Abstracts Ondisc(UMI社のCD-ROM製品の総称はProQuest Databases Ondisc)では,詳細表示画面中の用語で,検索画面に戻ることも検索語を新たに入力する必要もなく,検索を続けることが可能である。操作は簡単で,検索したい用語をカーソルで指示し,ファンクション・キーを押すだけでよい。例えば,modern Japanという用語で検索されたレコードの抄録中にMeiji Restorationという用語を見つけ,再度検索したくなったとする。その場合にはカーソルをMのところに移し,ファンクション・キーを2度叩けば(Meijiだけを検索したければ1度),上記2語を隣接演算した検索結果画面になる。UMI社はこの機能をSideways Searchと称している。
米国のトランザクション・ログ・アナリシスによるOPACの利用調査によれば,ゼロ・ヒットの原因の14%(シラキュース大)2),21%(ミズーリ大)3),18%(ノース・カロライナ州立大)4)を綴字ミスまたはタイプミスが占めた。英数字のみの検索で,かつタイプライター式のキーボードに馴染んでいると考えられる米国においてすら,正確な検索語の入力は利用者にとってかなりの負担になっているようである。同音異義語の多い日本語検索で精度を高めるため漢字キーワード・インデックスを採用しているOPAC,CDPACは多いが,ワープロの使用経験のない利用者にとって漢字検索はかなり難しいに違いない。カーソル・キーとファンクション・キーだけで正確な検索を続けることが可能なSideways Searchのような機能があれば,特に漢字キーワード・インデックスのある日本のOPAC,CDPACの検索の正確さと速度,さらにインターフェイスを格段に向上させることになろう。
福島寿男(ふくしまひさお)
Ref: 1)松村多美子 ランカスターのメドラース実績評価を通してみた情報システムと利用者間の相互作用 Library and Information Science (10) 169-186, 1972
2)Markey, Karen. Subject Searching in Library Catalogs: Before and After the Introduction of Online Catalogs. OCLC, 1984. p.66
3)Peters, Thomas A. When smart people fail: an analysis of the transaction log of an online public access catalog. Journal of Academic Librarianship 15 (5) 267-273, 1989
4)Hunter, Rhonda N. Success and failures of patrons searching the online catalog at a large academic library: a transaction long analysis. RQ 30 (3) 395-402, 1991