CA867 – 図書館情報分野の専門人材の流出 / 沖野文子

カレントアウェアネス
No.163 1993.03.20


CA867

図書館情報分野の専門人材の流出

イギリスのバーミンガム・ポリテクニックでは,1990年代の重大な問題である人材の図書館情報分野外への流出について調査を行った。

調査は16の図書館学校の専門コースを修了した1988年の卒業生すべてを対象とし,1988,89,91年の3回にわたってアンケートを配布する方法で行われた。調査開始時の登録人数は867名であったが,調査が数年に及んでおこなわれたためか,アンケートの回収数は1988年721名,1989年562名,1991年322名と減少している。

調査結果として,働いている分野の割合は,1988年の調査では図書館情報分野約68%,他の分野約10%,求職者約15%,仕事に就いていないし求めてもいない人約7%となっている。一方,1991年の調査では求職者の割合が減少し,93.4%の人が仕事に就いている。その中では他の分野で仕事に就く人の割合が増加している。

調査結果を男女別に見ると,次の2点が明らかになった。第一に,分野に関わらず,男性の方が女性よりも仕事に就きづらいという結果が出た。男性全体における男性の求職者の割合は約22%(1988年)から約10%(1991年)へと減少しているものの,女性全体における求職者の割合が約12%(1988年)から約2%(1991年)へと減少していることと比較すると,その割合は高い。第二に,女性の方が男性よりも図書館情報分野外で仕事に就いていることが明らかになった。1991年の調査では,他の分野で仕事に就いている人の割合は男性が男性全体の約10%に対し,女性は女性全体の約20%を占めている。したがって,性によって他分野への人材の流出が見られるといえる。

また,学歴による他分野への人材の流出も明らかになり,大学院コースの卒業生が選んだ専門職にもっとも多くとどまっているという結果が出た。これは長い時間をかけて自分の職業適性を見極めた結果ではないかと分析しており,事実,資格を得たときに28歳以上の人は図書館情報分野の仕事に80%以上就いているとしている。

図書館情報分野外で仕事に就いている人を分析すると,この分野で身に付いた知識や技術を生かした初期訓練の必要のない分野,例えば,情報技術分野で仕事に就く場合が多いといえる。

こうした人達に12か月後に図書館情報分野で仕事に就くかを聞いてみたところ,84%の人がその可能性を否定した。その理由として,図書館情報分野の仕事の機会の不足,仕事の満足度の無さ等があげられた。

一方,図書館情報分野で仕事に就いている人に同じ問いをしたところ,91.3%の人がこの分野にとどまるだろうと返答した。しかし,これらの人達も図書館情報分野の仕事に対する意気込みが薄れてきていると答えている。その理由として,安い給料,貧しいイメージ・地位,将来の見通しが明るくないこと,専門職の勤め口の不足,組織上の問題,仕事の満足度の無さ等があげられた。

研究チームでは,雇用者と教育者がすぐに,新人をもっと大切にし,専門職業人としてもっと充実した経験と経歴とを積めるように長期にわたる改善を行わなければ,この分野に未来はないと言っている。

沖野文子(おきのあやこ)

Ref: Elkin, Judith et al. Wastage within the library and information profession: a report. Journal of Librarianship and Information Science 24 (2) 71-77 1992