CA858 – ユネスコがCD−ROMサービス開始 / 富田美樹子

カレントアウェアネス
No.162 1993.02.20


CA858

ユネスコがCD-ROMサービス開始

昨年のIFLAニューデリー大会において,ユネスコのデータベースのCD-ROMによる提供について報告がなされた。

ユネスコは国連専門機関として,教育・科学分野における専門情報を大量に蓄積している。これらは,例えばUNESBIB(ユネスコのドキュメント,図書類の書誌データベース)は1972年から,IBEDOC(教育関係データベース)は1976年から構築されているが,利用は限られており,加盟国のユーザのニーズに応えられるものとはなっていない。このためユネスコ総会において第三次中期プラン(1990-1995)の一環として,ユネスコの各種情報システムを整備統合し,もっと広く流布するために,クリアリングハウスを設置することが決定された。

また途上国を含む加盟国間に情報ニーズの差があることを考慮し,ニーズの把握のために1990-1991年にかけて,約50ケ国に対して利用者調査が実施された。国立国会図書館(NDL)もこの調査には参加しているが,これはユネスコ関連分野の中でよく利用される分野,必要とされる情報のタイプ,既に利用しているデータベースの種類,保有機種など22ページにわたる詳細なものであった。返送された約一万件の回答をもとに,CD-ROMにより提供することと提供の内容が決定された。このCD-ROMには既存データベースの中からUNESBIB,IBEDOCを含む6つのデータベースが含まれている。

作成されたCD-ROMは,前述の利用者調査に参加した機関の中からNDLを含む80ケ国,267ケ所に試用のため送付された。試用機関には評価の調査票も送られてきたが,回収された調査票97件の内訳は図のとおりである。内容等についての評価は,概ね好評であった。回答者の30%が1〜5,25%が6〜10タイトルのCD-ROMを使用しており,他のメディアを併用しているところは88.7%,特にオンラインは77.3%が使用している。使用機種は,53%が日立である。CD-ROMの利点としては,使いやすさ,コストの低さ,データ蓄積量の多さ,時間を気にしなくてよい点などがあげられている。

今回の調査結果から,CD-ROMに関しては南北を問わず各国で強い関心があることがわかり,ユネスコ情報を世界中に流布させる手段として,最適であることが確認された。1993年には新版のCD-ROMが発行予定であり,これにはユネスコ・シソーラスとAIDS予防の書誌情報が加えられることになっている。また,翻訳書目録,世界遺産情報の2点のCD-ROMも発行が予定されている。

なお,NDLでのCD-ROM版書誌情報データベースの使用は,職員のレファレンス処理のための事務用に限られている。

富田美樹子(とみたみきこ)

Ref: Dissemination of UNESCO databases on CD-ROM(IFLA報告1992)
Survey on the information service needs of Member-States of UNESCO〔1990〕
The implementation of the UNESCO Clearing-house 1989