カレントアウェアネス
No.127 1990.03.20
CA656
LC件名標目表のCD-ROM版
LCは,1988年8月にLCSH(米国議会図書館件名標目表)のCD-ROM版を刊行した。これは,LCSHを付与したり,それを使って検索している人々にとって願ってもない朗報であった。周知のようにLCSHは浩瀚で,精緻にできているために,適切な件名を選択するのに時間がかかりかなりの苦労を要するが,これを使用すれば随分それが軽減されるからである。
収録件数は162,750件で,若干の人名,団体名,会議名,統一書名も含んでいる。関連語(RT),上位概念語(BT),下位概念語(NT)の参照や「をもみよ参照」の用法は冊子版と同じであるが,排列はコンピュータ処理のために,年代順などに多少の異同がある。
データベースに対するアクセス法は,ウィンドー方式でSearch,Browse,Format,Action,Database,Quitの6種のメニューがある。このうちSearchとBrowseがデータの検索に,Formatは表示形とローカル・データ作成フォーマットの選択,Actionは種々の機能を可能にし,DatabaseはLC人名典拠CD-ROM版との変換を可能にすることになっている。
SearchとBrowseはそれぞれ異なった検索に用いられる。Browseは単一もしくは少数の要素で構成される主題や,特定の件名が思い浮かばない場合に向いており,Searchは複合・混合主題(例:湖に及ぼす酸性雨の影響)などに対する件名標目の検索に向いている。Browseでは論理演算や組み合わせ検索はできないが,件名標目,キーワード(細目つき),キーワード(細目なし),LCC分類記号,典拠コントロール番号をそれぞれ検索の対象にできる。件名標目では,それが細目をもつか(+),参照をもつか(R),地理区分ができるか(G)などが表示される。また,キーワードや分類記号では,その名辞の件名標目表のなかでの出現頻度が明示される。
一方,Searchでは,論理演算検索が可能であり,一度に10件位までの検索が次々と行える。最初の画面には,左に検索対象の一覧<件名標目(細目つき),件名標目(細目なし),キーワード(細目つき),キーワード(細目なし),LC分類記号,典拠コントロール番号,組み合わせ検索結果>と,右に検索コマンド入力画面が同時に現われる。検索結果表示画面では,該当する件名標目がアルファベット順に示され,それぞれが細目や参照を有しているか,地理区分ができるかなども表示される。さらに,その件名標目について,シソーラス表示形やタグ付与表示形でもみることができる。例えば,シソーラス表示形では,その件名標目の関連語,上位概念語,下位概念語がたちどころに一覧でき,きわめて便利である。
マニュアルは多少改善の余地があるものの,非常に使いやすそうだが,あくまでこのCD-ROM版は,LCSHに通じた図書館員のためのものであり,一般の利用者向きではないようだ。カタロガーには,件名標目の選択や細目の付与,および全体の構成が従来より早く簡単にできるのはいうまでもないが,レファレンス担当者にもサーチの有力なツールとなる。日本では,LCSHを使用する図書館はきわめて少ないが,USMARCなどの検索のために,是非ともこれを備えたいものである。また,基本件名標目表や国立国会図書館件名標目表の改善にも参考になるのではないだろうか。
なお,価格は季刊の累積版で国内が年300ドル,国外が370ドルである。
那須雅煕
Ref: Joy, Albert H. & Keane, Nancy J. CDMARC Subjects: the Library of Congress subject headings on CD-ROM. CD-ROM Librarian 4 (9) 36-45, 1989.