カレントアウェアネス
No.162 1993.02.20
CA859
BLDSCの著作権関係資料コレクション
近年,技術革新,国際化の波の中で著作権に関する様々な問題が続出し,国内,国外で大きく論議されている。図書館界はこれについて,自らの立場を明確にし,的確な対応策をとる必要に迫られている。その支援体制のひとつとなる英国図書館文献供給センター(BLDSC:以下センター)のUAP事務局(注1)にある著作権関係資料コレクションの概要を紹介する。
このコレクションはセンターの国際的な業務の必要性から設けられたもので,BLの著作権担当者であるG. Cornish氏(注2)の力に負うところが大きい。資料の利用は,現在のところBLの職員および著作権関係者に限られている。BLにおける著作権に関する問題は,すべてここで処理することになっている。
規模
UAP事務局の室内にあるためスペースは十分ではない。図書,パンフレット,論文記事,新聞切り抜き記事,手紙,メモのうち重要なものを選択して所蔵する。利用者はセンターの所蔵する関係資料も利用できる。両者を合わせると相当な規模になる。
範囲と内容
収集の重点を複写および図書館と著作権との関係に関する資料に置く。従って著作者人格権や隣接権関係はカバーしていない。また業務用資料としての性格を有することから,英国の資料が中心になっている。
外国については,公刊された諸法令(英語)及び重要な論文記事のコピーを国別にファイルしている。国によって資料の質,量に差異がある。
構成
現在,図書2連,ファイリングキャビネット1だけであるが,十分利用に耐える。なお特別の索引は存在しない。国別ファイルはアルファベット順に配列し,センターの書庫から直ちに出納できるようにレファレンスの内容や書誌事項の記録を綴る。
○ファイリングキャビネット
1.国別ファイル
2.英国の著作権に関する諸委員会や機関のファイル(特定の著作権問題に関する文書類を含む)
3.図書館や一般からの照会文書等のファイル
○図書等書架
法令関係資料及び使用頻度の高い図書。他の図書,雑誌はセンターのメイン・コレクションとして収蔵。
維持管理
主要な英文雑誌は定期的にチェックして,重要な記事を記録し,しかるべき場所にファイルする。他の資料は受入れに応じて随時追加する。国際関係については特に系統だった整理は行わず,それぞれの場合に応じてファイルを作成する。また,このコレクションに対する特別の財政措置はない。
利用
業務用資料のため部外者が単独でこの資料を効率的に利用することは極めて難しい。従って利用するときは,事前に連絡しておけば担当職員がUAP事務局とセンターの所蔵資料の中から希望する資料を用意しておいてくれる。
将来の見通し
他の諸国に同じような機関があればそれらの情報を集めて図書館に関する著作権のための国際的なクリアリング・ハウスとすることができよう。それには各国の図書館人や著作権関係機関の協力が必要で,IFLAメンバーの助力が望まれる。また,多種多様な言語の壁を乗り越えるためには,国際協力のネットワークを構築するのが最も良い方法であろう。
ここが将来の国際図書館著作権レファレンスセンター(ILCRC)生誕の地となることも夢ではない。
森山高根(もりやまたかね)
(注)
1.UAP(Universal Availability of Publications)と0IL(Office for International Lending)は,いずれもIFLAの組織(プログラム)で,BLDSCに事務局が置かれている。
2.Cornish氏はIFLA著作権委員会の委員でもある。先のIFLAニューデリー大会で同席した際,我が国の著作権法を紹介したCopyright Law of Japan 1991. 3を寄贈し,コレクションに加えてもらった。
Ref: Pinion, C. BLDSC: UAP/OIL Office International Copyright Collection. 1992. 3