カレントアウェアネス
No.190 1995.06.20
CA1011
SilverPlatter社のサービス拡張計画
図書館向けCD-ROM出版の草分けであるSilverPlatter社が,サービス拡張計画を発表した。
その第一歩は,インターネットによる同社のデータベースへのアクセスである。ユーザーは,インターネットを通じて,マサチューセッツ州にある同社のオフィスに蓄積されているデータベースにアクセスする。料金は固定制で,従来のCD-ROM利用料金とほぼ同額になるように設定されている。つまり,図書館は,CD-ROMを買わなくても,インターネットを通じて従来と同じサービスを利用者に提供することができる,というのである。現在,Criminal Justice Abstractsなどを提供している。
図書館にオートメーションシステムを提供する多くのベンダーは最近アウトソーシング(outsourcing)を提案している。インターネットの普及により,回線料金や接続手続きのことを余り気にしなくても検索サービスや原報提供サービスを利用できる環境が生まれてきたことに対応して,図書館に対し,一括契約によりOPACなどの図書館サービスの一部として自社のデータベースサービスを利用者に提供するように働きかける,というものである。SilverPlatter社はこのような動きに加わることになる。
これまでCD-ROMによるサービスを行ってきた同社のオンラインへの移行は意外なことのように受け取られるが,広報担当のE. Morleyによれば同社はインターネット経由のサービスを究極のサービスとは考えていない。同社を創業したB. Hatvanyの戦略の中核は,情報をフォーマットに関係なく一般市民に提供する,というものだが,インターネットサービスはそのための次なるステップとして必然的にあらわれたものである。同社は将来的なビジョンとして,他社と提携して世界的な電子図書館をつくることを計画し,そのための活動を始めている。
具体的には,リソースシェアリングの基盤として,同社のクライアント/サーバー アーキテクチャ(Electronic Reference Library, ERL)の技術を提携する他社に提供したり,全ての情報をERLに準拠した形にするために電子出版のモジュールを開発したりしている。また,図書館員が情報検索の戦略を立てるときに使えるツールとしてSearch Advisorというソフトウェアを開発した。
Morleyによれば,世界規模の電子図書館を作ることはSilverPlatter社が創業当時から抱き続けてきたビジョンである。ただしこの目標を一社だけでは達成できないということも,以前から認識されていた。Morleyは言う。「私たちは他社と共に研究する必要があるのです」と。
さて,出版社によって電子「図書館」が作られる時代に,従来の図書館はいったい何をするのだろうか。これは最近多くの人が熱心に議論しているテーマであるが,「著作者や出版者と読者が直接つながるのだから,図書館の役割はなくなるだろう」から,「いや,そのようなときにこそ図書館には重要な役割(情報の公平なアクセスや保存など)が期待される」まで,意見は様々である。図書館人としては,後者のいうような将来を思い描きたいものだが,そのためには今,SilverPlatter社のビジョンなど出版社の動きのみならず,社会全体の動向に目を向け,機会を捉えて積極的に図書館側の意見を表明していくべきであろう。
清水悦子(しみずえつこ)
Ref: SilverPlatter expands with new services and partnerships. Libr J 119 (21) 29-30, 1994