CA1020 – 公共図書館におけるCD−ROM資料の利用:日本と米国の導入状況 / 蛭田顕子

カレントアウェアネス
No.192 1995.08.20


CA1020

公共図書館におけるCD-ROM資料の利用
−日本と米国の導入状況−

昨年3月に行われた日本図書館協会の「公共図書館のコンピュータ利用調査」によると,CD-ROMを閲覧用に備えているのは45館(うち35館は事務用にも使用)のみで,293館は事務用と答えており,純粋に閲覧用に導入している館は非常に少ないという結果が出た。現在使用中のCD-ROMタイトルは,多い順からJ-BISC(186館),TRCD(123館),他館の蔵書目録(111館)で,書誌的なものが上位を占め,以下,CD-HIASK(46館),広辞苑(32館)と続く。事典類の活用はまだ少なく,これからという状況のようだ。

同様の結果は,当館が今年行った「都道府県立及び政令指定都市立図書館におけるレファレンスサービスの現状に関するアンケート」からも得られた。これによると,CD-ROMや外部データベースを利用しているのは70館中55館であった。CD-ROMタイトルについて利用中あるいは導入予定のものを多い順にあげると,J-BISC(23館),CD-HIASK(11館),TRCD(9館),法律判例文献情報(6館)と続き,ここでも書誌情報的なものが優先される傾向が伺える。

一方,アメリカでは,CD-ROM販売は今や10億ドル産業といわれ,CD-ROMは急速に消費者に普及しつつある。図書館もまた,このような状況に対応しようとしている。Library Journalの調査(公共,学術,専門図書館500館対象)では,CD-ROMについて,4%の館が貸出サービスを行い,約60%はレファレンス用として使用しているという。公共図書館が所蔵するCD-ROMのタイプは,多い順から『Books in Print Plus』等の図書目録型,『Grolier Electronic Encyclopedia』,『Reference Library』等のレファレンス用,『Sherlock Holmes』,『The Way Things Work』等のマルチメディア型,『Dun's Million Dollar Disc』等の専門分野に関する情報で,アメリカでも書誌情報の比重は高いが,日本と比べ書誌以外のレファレンス用ツールも多く利用され,マルチメディア型,専門分野のものも揃えている館は3割程度ある。その中でも公共図書館は,他の館種と比べてマルチメディア型への関心の高さが目につく。また,マルチメディア対応のCD-ROMドライブを公共図書館では49.4%が設置しているのも全体の平均より高い。

先にCD-ROMの貸出について触れたが,オハイオ州ジオーガ郡立図書館は,昨年からアメリカでも数少ないこのサービスに踏み切った。同館は,貸出開始6か月前に専門委員会を設置し,利用者に対して所有あるいは購入予定のパソコン機種,利用したい資料の分野について調査した。その結果,77%がCD-ROMドライブ付パソコンを有し,機種はIBM/PC互換機が89%,マッキントッシュが11%であることがわかった。分野は,旅行地理,科学技術,百科事典,ビジネス経営,児童書の順で要望が高かった。ノンフィクションを望む声も多く,図書館の予想とは必ずしも一致しなかった。

これを受けて,同館は,互換性の高いソフトを購入する,情報量が多く教育的で創造性を養う資料を選択する,という方針を打ち出した。また,従来中央館で集中させていた選書業務を分散化し,利用者のニーズに直接ぶつかる各館の利用者サービス部門の職員に任せることにした。なお,選書ソースの再検討も合わせて行われた。貸出サービスに向けた検討過程では,利用者サービスの向上と日常業務に新しいサービスをどう組み入れるかが常に念頭におかれた。

現在,同館では160タイトルのCD-ROMを保有し,1人につき1週間に2タイトルまでの貸出をしている。利用者の反応は上々で,これからもサービスを拡大していく方向である。

日本とアメリカでは状況が異なるが,この検討過程は,今後のCD-ROM資料の構築,サービス拡大に多くの示唆を含むと思われる。

蛭田顕子(ひるたあきこ)

Ref:公共図書館のコンピュータ利用調査報告書 日本図書館協会 1994. 63-64p.
都道府県立及び政令指定都市立図書館におけるレファレンスサービスの現状回答集計報告 国立国会図書館 1995. 13p
Lubelski, Greg W. Multimedia to go: Circulafing CD-ROMs at Geauga County Public Library. Libr J 120 (2) 37-39, 1995
Lifer, Evan St. Catching on to the “now” medium: LJ's Multimedia/Technology Survey. Libr J 120 (2) 44-45, 1995