米国化学会(ACS)、著者の名称表記に関する新方針を発表:著者の求めに応じて発表済文献の表記を更新可能に

2020年9月10日、米国化学会(ACS)の出版部門は、ACSの出版物から発表済の文献について、著者の名称表記の更新を可能とする方針を策定したことを発表しました。

2020年10月の同方針適用後、ジェンダー・婚姻・宗教等の理由を問わず、自身の名前を変更した著者は、ACSの出版物から発表済の文献における名称表記を最新の内容へ更新するように求めることができます。プライバシー保護のため、表記の更新にあたって証明書等を著者に求めることは行われず、発表当時の編集者や共著者へも更新は通知されません。また、名称の変更は私的な領域に属する決定であること等の理由から、当該文献の修正とはみなされないことや、同方針による名称表記の変更は代名詞・敬称等を含む文献内の全ての箇所で適切に反映されることを説明しています。

ACSは、トランスジェンダー研究者コミュニティの求めに応じて同方針を策定しました。今後も旧名称の更新を希望する全ての著者と協力しながら、そのニーズに適応できるように方針の検討を継続し、運用の次の段階として、引用における著者の名称表記の更新に取り組むことを表明しています。

New policy will allow authors an easy route to change names on previous publications(ACS,2020/9/10)
https://www.acs.org/content/acs/en/pressroom/newsreleases/2020/september/new-policy-will-allow-authors-easy-route-to-change-names-on-previous-publications.html

参考:
CA1740 – 動向レビュー:著者の名寄せと研究者識別子ORCID / 蔵川 圭
カレントアウェアネス No.307 2011年3月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1740