カレントアウェアネス-E
No.161 2009.11.18
E994
「Y世代」の研究行動調査の中間報告(英国)
2009年4月,英国図書館(BL)と英国情報システム合同委員会(JISC)は,「Y世代(Generation Y)」と呼ばれる世代の博士課程の学生の情報探索行動や研究行動を調査する3年間の調査プロジェクト“Researchers of Tomorrow”を開始した。プロジェクトの第1段階として行われた,英国のフルタイムの博士課程のすべての学生を対象とした調査の結果が,2009年11月4日に中間報告として公表された。
このプロジェクトの中では,Y世代は1982年から1994年に生まれた世代と定義されている。2008年に行われた調査の対象となった「Google世代」(1993年以降に生まれた世代;E745参照)よりも1世代前の世代であり,いわゆる「デジタルネイティブ」には当たらず,インターネットやデジタル媒体と共に成長してきているのが特徴である。博士課程の学生全体を対象とした今回の調査では,6,562人からの回答のうち5,408人分の回答が分析に有効と判断されており,21歳から27歳までの年齢グループ,すなわちY世代のグループは全体の38%にあたる2,061人となっている。
いくつかの調査項目でY世代のグループと他の年齢グループとの違いが示されている。研究分野を見ると,他の年齢グループでは,人文科学や社会科学分野が多くなっているのに比べて,Y世代のグループでは,各分野にほぼ均等に分かれている。主な研究場所については,回答者全体では,研究所等のオフィススペースで研究する割合が40%,自宅が39%と差はあまり見られないが,Y世代のグループではオフィススペースが50%を超えており,自宅は20%以下と他の年齢グループとの差が顕著に示されている。
一方で,Y世代のグループと他の年齢グループとの間で目立った差が示されていない項目もある。情報探索の対象はグループに関わらず多くの回答者が2次情報を挙げており,探索先はGoogleおよびGoogle Scholarがグループに関わらず最も多い。ウェブ2.0ツールなどの新しい技術の利用率は,Y世代のグループも回答者全体も共に低い値となっている。回答者全体の値では,ソーシャルブックマークがおよそ10%,Twitterが20%強,最も高いWikiでも50%を下回っている。
図書館についての項目もある。日常的に図書館スタッフに協力を求めるY世代のグループの割合は11%で,他の年齢グループの17%よりも低くなっている。図書館の主題専門スタッフに助言を求める回答者の割合も,全体平均が9%であるのに対してY世代のグループでは4%である。逆に,指導教員に助言を求めるY世代のグループの割合は60%で,全体平均の47%よりも高い値になっている。
プロジェクトの中核となるのは,“Tracker”と名づけられた70人を対象にした長期調査で,3年間での情報探索行動の発達過程が観察される。プロジェクトは今後,この長期調査と,Y世代の博士課程1年目の学生350人ほどを対象にして情報探索の知識や経験を調べる小規模な調査を実施する予定とのことである。
Ref:
http://explorationforchange.net/attachments/054_Summary%20Report%20Final.pdf
http://explorationforchange.net/index.php/current-projects/researchers-of-tomorrow/researchers-of-tomorrow-home.html
http://www.bl.uk/news/2009/pressrelease20091105.html
E745