E1190 - 「Y世代」の研究行動調査 2年目の年次報告(英国)

カレントアウェアネス-E

No.196 2011.07.07

 

 E1190

「Y世代」の研究行動調査 2年目の年次報告(英国)

 

 2011年6月,英国図書館(BL)と英国情報システム合同委員会(JISC)による3年間の調査プロジェクト“Researchers of Tomorrow”の2年目の年次報告が公表された。このプロジェクトは「Y世代」(Generation Y)と呼ばれる世代の博士課程学生の情報探索行動や研究行動の特徴を明らかにすることを目的に2009年4月に開始されたものである。これまでに1年目の中間報告(E994参照)と年次報告が公表されている。

 プロジェクトの中ではY世代とは1982年から1994年に生まれた世代と定義されている。いわゆる「Google世代」(E745参照)の1世代前にあたり,「Googleがあればなんとかなる」というわけではない環境で情報探索・探求スキルを身につけてきたと想定される世代である。1年目の調査からはY世代の学生が優れた情報探索スキルを有する一方で,ICTの活用や電子情報源と印刷媒体のどちらを選ぶか等については年長世代と大きく変わりがなく,研究へのデジタル技術の活用や研究成果の共有についてはむしろ慎重であることが示された。2年目にあたる今回の報告では2010年3月から2011年2月にかけて収集した,47人のY世代の博士課程学生を対象とする継続調査データと,2010年6月に行った英国全土の博士課程学生を対象とする質問紙調査(有効回答数はY世代が2,239件,年長世代が2,568件)の結果を分析している。

 1年目の調査結果と同様に,Y世代と年長世代で大きな差があった項目は少ない。研究環境(Y世代の方が年長世代よりも大学等での研究を好む)等,明確な差の見られた項目であっても,多くはグループ間の分野構成の差(年長世代の方が社会科学・人文学分野の回答者が多かった)を反映したものと考えられている。

 しかしY世代に特徴的な傾向もいくつか見られた。中でも大きな特徴は友人の役割である。Y世代が,所属機関等の購入・提供するサービス(文献管理ツール等)を利用するきっかけで最も多いのは友人の勧めであり,回答者の50%が選んでいる(年長世代では39%)。それらサービスの利用時にY世代が手助けを求める相手も友人である。また,Graduate junction(大学院生向けのSNS)やMendeley(文献管理ツール)等,無料ウェブサービスを研究に活用するY世代の回答者が1年目に比べ増加していたが,そのきっかけも友人の勧めが最も多かった。

 一方でこのような無料ウェブサービスの利用について,図書館員や指導教員から支援を受けた回答者はほとんどいない(Y世代の回答者の80%以上はなんらの支援も受けていない)。大学等からの講習や支援がないため,ウェブサービスの研究での利用が正当性を欠いているように感じられることが,回答者がそれらのサービスを研究の中で利用することにためらいを持つ一因であると指摘されている。

 研究情報の利用に関する指導については,Y世代は自分の属する研究科等や指導教員を信頼しているほか,対面での指導を好み,ここでも友人をインフォーマルな指導者として日常的に活用している。一方で自分の分野や個人的なニーズに合っていない,一般的な教育内容には満足していない。

 また,オープンアクセス情報源の利用やオープンアクセス媒体での発表には,Y世代は年長世代よりわずかにためらいが少ない。ただし進捗中の研究成果の公開には慎重である。また,両方の世代において,オープンアクセスやセルフアーカイビングに対する理解には混乱が見られた。

 その他のY世代の特徴として,年長世代よりも研究の進捗におおらかであることが挙げられる。ただし両方の世代で1年目より2年目の調査時の方が研究の進捗にプレッシャーを感じる者が増えており,中でも時間的制約を感じる者の割合が多かった。

 プロジェクトは現在,最終年度である3年目に入っている。3年目では研究の共有・公開,ソーシャルメディアの研究での利用,著作権・知的財産権等に焦点をあてていくと共に,これまでの成果に基づきY世代の学生に対し大学等が行う支援のベストプラクティスを策定する予定とのことである。

(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科・佐藤翔)

Ref:
http://explorationforchange.net/attachments/059_Researchers%20of%20Tomorrow%20Year%202%20report%20final%20110510.pdf
http://www.jisc.ac.uk/news/stories/2011/06/researchersoftomorrow.aspx
http://www.researchersoftomorrow.net/
E745
E994