カレントアウェアネス-E
No.160 2009.11.04
E984
経済不況のあおりを受ける図書館情報学卒業生の就職状況(米国)
2009年10月,米国の図書館関連情報誌Library Journalは,図書館情報学を学び2008年に卒業した学生たちの就職状況の調査結果“Placements & Salaries Survey 2009”を公表した。調査はLibrary Journalが毎年行っているもので,卒業生らの就職先や給与,職位などに関する項目について,該当機関あるいは個人からの回答を集計している。今回の調査では,推定で約6,500人いるとされる卒業生のうち約2,000人分の回答がまとめられている。
図書館関係職に就いた卒業生の割合は87.3%で前年の87.9%に比べて差はあまりないが,正規職員として雇用された割合が69.8%と前年の89.2%に比べて大きく減少し,逆にパートタイムや非正規職といった雇用形態が増加している。また,どの職にも就くことができなかった卒業生の割合も5.9%で前年の4.7%に比べて悪化している。
就職先を館種別に見てみると,公共図書館が29.6%と最も多く,次いで大学図書館が29.3%,学校図書館が13.2%となっている。専門図書館は6.5%,政府系図書館は前年から引き続き低い割合の3.5%である。図書館関係職に就いた卒業生の初任給の平均額は前年の42,361ドルより
1.8%低い41,579ドルで,18年間上昇を続けていた傾向が下落に転じている。米国西部地域では,全国平均よりは高いものの,前年の50,736ドルから4.2%低い48,593ドルとなっており,中西部,南東部でも同様で,それぞれ3.1%, 4.5%の下落である。
一方で,良いニュースも紹介されている。北東部で職を見つけた卒業生の初任給の平均額は,同地域の前年の平均額よりも高く,また全国平均額よりも高い。このほか,大学図書館だけを見れば,初任給の平均額は前年に比べてほぼ横ばいであるものの,正規職員として雇用された卒業生は前年よりも13.4%ほど増加している。
今回の調査では,女性男性別の就職状況や,図書館学と情報学の比較などの調査結果も掲載されているが,目にとまるのは,上記のような米国の経済不況の影響を大きく受けたと推測される結果である。記事中の「不景気だぜ,ベイビー!(It’s a recession, baby!)」との言葉が,2008年の図書館情報学卒業生の図書館就職状況を端的に表しており,2009年の卒業生にとっても同様の状況であると予想されている。
Ref:
http://www.libraryjournal.com/article/CA6700603.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA6700592.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA6700597.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA6602490.html