カレントアウェアネス-E
No.160 2009.11.04
E987
新たに登場した書誌ユーティリティ“SkyRiver”
2009年10月8日,米国の新興企業SkyRiver社は,新たな書誌ユーティリティ“SkyRiver”の創設を発表した。同月6日には,その発表に先立ち, LibraryJournalがこの新しい書誌ユーティリティについての記事“New Company SkyRiver Sparks Cataloging Competition with OCLC”を掲載し,同月14日には,米国図書館協会(ALA)の出版部門の1つであるALATechSourceがブログ上に“Sky me a River”と題する記事を掲載した。
10月8日の発表と共に公開されたウェブサイト上の情報によるとSkyRiverは,米国議会図書館(LC)や英国図書館(BL),逐次刊行物の総合目録“CONSER”などの約2,000万件のレコードを,検索,編集,自館目録への追加などのサービスと共に,あらゆる館種,あらゆる図書館システムに提供する。また,強力な検索システム,レコードリクエスト通知,書誌レコードと典拠レコードのワンクリックでのダウンロードなどを特徴的なサービスとして挙げている。
SkyRiverが,1億4,400万件のレコードを有するOCLCと対抗する際の重要なメリットとされているのが,図書館の目録作成にかかる費用を削減することができるという点である。LibraryJournalの記事では,SkyRiverにはOCLCの独占状態の市場を拡大し,図書館に40%の費用削減が可能な書誌ユーティリティを新たな選択肢として提供するとの意図があると紹介されている。SkyRiverは,具体的な金額は挙げられていないものの,利用に応じた課金はせず,利用制限を設けない年間契約を図書館と結ぶという形をとるようである。同記事には,2009年1月に始まったLibLime社の無料の共同目録サービス“‡biblios.net”(E890参照)が,OCLCに対抗するほどのものではなく,またSkyRiverのような付加的サービスも提供していないとの見方も示されている。
ALA TechSource Blogの記事では,質の高さの保証,コストの安さ,レコードの所有と権利を主張しないこと(E864参照),というSkyRiverが強調するOCLCよりも優位な3つの点が紹介されているが,その一方で,SkyRiverが具体的な提携機関を発表しないことを疑問視する内容が記されている。この記事を受けてのことかどうかは定かではないが,SkyRiverは,記事掲載の5日後にあたる2009年10月19日付けでウェブサイト上に,ミシガン州立大学図書館,カリフォルニア州立大学ロングビーチ校図書館という2つの提携機関を示している。
複数の開発協力機関とのテストを経た後,2010年1月にSkyRiverの本格的なサービス開始が予定されている。
Ref:
http://theskyriver.com/
http://www.libraryjournal.com/article/CA6700415.html
http://www.alatechsource.org/blog/2009/10/sky-me-a-river.html
http://theskyriver.com/2009/10/two-academic-libraries-sign-on
E864
E890