カレントアウェアネス-E
No.160 2009.11.04
E988
セマンティックウェブにおけるダブリンコアの可能性<報告>
2009年10月12日から16日までの5日間にわたり,「2009年ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DC2009)」が韓国国立中央図書館で開催された。この会議は,ダブリンコア等のメタデータに関する研究発表や意見交換の場として毎年開かれ,17回目となる今年度のテーマは「LinkedDataのセマンティックな相互運用性(Semantic Interoperability of Linked Data)」であった。会議には,日本からの11名を含む97名が参加した。
5日間のプログラムは,初日がチュートリアル基本編(Basic Tutorial),続く3日間が本会議,最終日がチュートリアル応用編(Advanced Tutorial)で構成され,2009年5月に開館した国立デジタル図書館“dibrary”(CA1641,E934参照)の館内見学も行われた。
チュートリアルの基本編では,ダブリンコアに関する基礎知識や他のメタデータ基準との相違点,相互運用性の各段階における課題とアプローチ等が体系的に説明され,応用編では,トピックマップやOWL等を用いたオントロジー (CA1534,CA1598参照)の設計や異なる知識の組織化体系の多様な連携方法とその課題に関してより具体的な内容に踏み込んだ講義がそれぞれ行われた。
本会議では,論文発表,プロジェクト報告,ポスター発表及びコミュニティセッションに加え,今年の会議のキーワードであるLinked Dataに関わる機能,技術及び戦略・政策の各側面に焦点を当てた特別セッションが開催された。Linked Dataは,セマンティックウェブ(CA1534参照)を基盤とし,個々のデータや概念に対してURIを与えて公開することで,様々なサイトの多様なデータを関連づけて利用できるようにするものである。Linked Dataの形でデータを共有することで,従来の閉じたシステム内で構築されていたデータが新たな価値を生み出す可能性をもつ。会議全体を通じ,既存のデータ間の連携にとどまらず,今後ウェブ上に生まれてくる新たなデータとの相互運用性も視野に入れた取組みや研究が報告された。
また,イ・ウンチョル(李恩徹)韓国図書館協会会長が,図書館におけるLinked Dataの可能性をテーマとした基調講演を行った。講演では,ユーザが情報の消費者としてだけでなく情報の生成者としてもウェブに関わるようになり,彼らのニーズを予測することが難しくなってきているセマンティックウェブの世界において,図書館が蓄積してきた多くの書誌データや典拠データ等をLinked Dataとして今後どのように提供できるかが課題として示された。
今年の会議は,例年に比べて小規模ではあったが,活発な質疑応答や意見交換が繰り広げられ,各機関又は各プロジェクトが抱えている様々な課題について共有することができた。なお,来年度の会議は2010年10月に米国ペンシルバニア州ピッツバーグで米国情報科学技術協会(ASIS&T)と提携して開催される予定である。
(関西館電子図書館課・柴田洋子)
Ref:
http://www.dc2009.kr/
http://www.dublincore.org/
http://dublincore.org/documents/2009/05/01/interoperability-levels/
http://www.w3.org/TR/2009/REC-skos-reference-20090818/
CA1534
CA1598
CA1641
E934