E1121 – ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議<報告>

カレントアウェアネス-E

No.183 2010.11.18

 

 E1121

ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議<報告>

 

 2010年10月20日から22日までの3日間,米国ペンシルベニア州ピッツバーグのヒルトンホテルで「2010年ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DC2010)」が開催された。この会議は,ダブリンコア(Dublin Core)等のメタデータに関する研究発表や意見交換の場として毎年開かれ,今回は米国情報科学技術協会(ASIS&T)年次大会と日程・会場を併せて開催された。23か国から150名の参加者があり,日本からは筆者を含め5名が参加した。

 20日にはチュートリアル,21~22日には基調講演,ペーパーセッション,プロジェクトリポートが開催され,これらと並行して各種コミュニティによるセッションやワークショップが開かれた。

 21日の基調講演では,DCMI(Dublin Core Metadata Initiative)創設時のメンバーの一人であるウェイベル(Stuart Weibel)氏が,ダブリンコアの開発から15年,会議の開始から10年を記念して,これまでのダブリンコアの歩みとこれからの展望について講演を行った。そこでは,DCMIのこれまでの活動に対する評価や,これからのDCMIの取り組みとして,コミュニティ間の連携を強めていくことの必要性等が述べられた。22日の基調講演では,バーグマン(Michael K. Bergman)氏から,現在のLinked Dataは,記述に用いる語彙の誤用,各語彙間の関連付けの欠如などの問題があり,セマンティックウェブ(CA1534参照)の志向する機械的な意味解釈という目標との間に「ギャップ」の存在することが指摘され,DCMIがこれまでの経験と権威を活かし,その「ギャップ」を埋める役割を担っていくことの期待が述べられた。

 ペーパーセッション,プロジェクトリポートでは,FRBRモデルに対応したアプリケーションプロファイルの開発等,FRBRに関する3本の発表があったほか,図書館や政府機関からダブリンコアメタデータの適用事例が数多く報告された。

 図書館アプリケーションプロファイル(Library Application Profile:DC-Lib)のタスクグループのワークショップでは,DCMIの下で整備が進められた相互運用性を担保するための基礎的なモデルであるAbstract ModelやSingapore Frameworkの反映,Linked Dataへの対応を目指して改訂が検討されているDC-Libについて,改訂版におけるスコープと機能要件,概念モデル,語彙の使用法について議論が行われた。議論の結果を踏まえて修正された最終草案が12月に出され,2011年初めに確定される予定である。また,DCMI/RDAタスクグループのワークショップでは,RDA(Resource Description and Access)の各語彙をRDF(Resource Description Framework)により定義するといった,当タスクグループによるこれまでの活動について紹介があったほか,DCMI Architecture ForumとW3C Linking Open Data Incubator Groupの共催による特別セッションでは,OWL(Web Ontology Language)による表現等,Abstract Modelの改訂に向けた議論が交わされた。

 前年(E988参照)同様,会議全体を通じてLinked Dataに対する強い関心が寄せられており,特にLinked Dataに関する特別セッションでは,Linked Dataとして書誌データを提供する際の概念モデルや語彙の使用法について活発な議論があった。書誌データのLinked Dataとしての表現方法については,米国図書館協会(ALA)や国際図書館連盟(IFLA)の年次大会で引き続き議論を行うこととなり,今後の動向が注目されるところである。なお,講演資料はDCMI Conference Paper Repositoryのウェブサイトで公開されている。

(収集書誌部・佐藤 良)

Ref:
http://www.asis.org/Conferences/DC2010/
http://dcpapers.dublincore.org/ojs/pubs
CA1534
E988