E1083 – SkyRiver,独占禁止法に違反するとしてOCLCを提訴

カレントアウェアネス-E

No.177 2010.08.19

 

 E1083

SkyRiver,独占禁止法に違反するとしてOCLCを提訴

 

 書誌データサービスを提供するSkyRiver社(E987参照)は,2010年7月28日,統合図書館システム(ILS)を手がけるInnovative Interfaces社と共に,OCLCを独占禁止法に違反しているとして米国カリフォルニア州の連邦地方裁判所に提訴し,7月29日にその旨をプレスリリースで発表した。訴状の前置き部分には次のような訴えの内容がまとめられている。

  • OCLCは,書誌データサービスや目録サービス,図書館間相互貸借(ILL)の各市場を不法に独占し,ILS市場においても独占を企てている。
  • OCLCは,市場独占の力を用いて,他の企業の市場への参入を妨げているほか,さらに別の市場へもその力を及ぼそうとしている。
  • OCLCは,参加館に対して営利目的で自館のレコードを再配布したり共有したりすることを禁止し,また,OCLCのデータベースへの営利目的でのアクセスを拒否している。
  • OCLCは,非課税の収益を利用して,営利・非営利の数多の企業を買収し,市場での独占状態を強化・維持している。

 2010年7月29日付けのLibrary Journalの記事では,一つの市場の独占を利用して他の市場の独占を図っていることが訴訟の重要なポイントとされている。具体的な状況として,OCLCが過去に競争相手であったWLN(CA1240参照)やRLG(E486参照)を統合して作り上げた書誌サービス市場での独占状態を維持するために,同様にして築いたILL市場の独占を利用してきたことや,OCLCがウェブスケールの図書館システム(CA1721E925参照)の導入に際し,書誌サービスといった他の市場の独占を用いてILS市場への参入・独占を図っていることなどが挙げられている。

 訴状には,SkyRiverの書誌サービスを使って作成したレコードをWorldCatに登録する際の料金についての記述もあり,具体的な例として,SkyRiverのパートナーであるミシガン州立大学図書館の状況が示されている。WorldCatを使ってILLサービスを利用するためには,書誌サービスの提供を受けていなくても,OCLCの参加館であり続けレコードを登録する必要がある。しかし,同館がSkyRiverの書誌サービスを使って作成したレコードをWorldCatへ登録する際,他のOCLC参加館の登録料が1レコード当たり0.23ドルであるのに対して,その10倍以上となる2.85ドルを請求されたため,登録を断念したという。

 SkyRiver社の訴えから1週間後の2010年8月5日,OCLCは,評議員会議長のアルフォード(Larry Alford)氏とCEOのジョーダン(Jay Jordan)氏の連名による声明をウェブサイトで公表した。声明には,この訴えが妥当性を欠いていることや,OCLCが現在行っている計画と活動を変更するつもりがないことなどが記されている。また,OCLCは,訴訟が決着するまでには,月単位あるいは年単位での長い時間を要すると見込んでおり,長期戦の構えを示している。

Ref:
http://theskyriver.com/2010/07/skyriver-files-antitrust-suit-against-oclc
http://www.librarytechnology.org/ltg-displaytext.pl?RC=14917
http://www.libraryjournal.com/lj/home/886099-264/skyriver_and_innovative_interfaces_file.html.csp
http://www.oclc.org/news/releases/2010/201043.htm
CA1240
CA1721
E486
E925
E987