E981 – オープンアクセス誌にとっての10の課題

カレントアウェアネス-E

No.159 2009.10.14

 

 E981

オープンアクセス誌にとっての10の課題

 

 “Open Access News”のズーバー(Peter Suber)氏が記した「オープンアクセス誌にとっての10の課題」と題する論考が,SPARC Open Access Newsletterの138号に掲載された。2009年9月14日から16日にかけてスウェーデンのルンド市で行われた,オープンアクセス学術出版社協会(OASPA;E849参照)主催の「オープンアクセス学術出版に関する第1回会議」でのプレゼンテーションを基に作成されたものである。オープンアクセス誌が直面する3つの隔たりと7つの疑念が示されている。

 3つの隔たりと,編集者や出版者が行うべきそれらの解消策として以下のようなものが挙げられている。

  • (1) 広く用いられている基準で測られた雑誌の重要度と実際との間にある隔たり
    インパクトファクターなどの広く用いられている基準には,オープンアクセス誌の重要度を測るに際して不十分な点があるため,実際との間に隔たりがある。Eigenfactor(E889参照)やUsage Factorなどの他の基準で図ることによって解消される。
  • (2) ビジョンとアクセスポリシーとの間にある隔たり
     オープンアクセス誌が掲げるオープンなビジョンに対して,アクセスポリシーにはオープンでない点が含まれるため,両者の間には隔たりがある。クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(E275参照)を始めとするオープンライセンスを使って,よりオープンな状態を築くことで解消される。
  • (3) 品質と評価との間にある隔たり
     品質と評価との間には妥当な評価が得られないことで生じる隔たりがある。有名な著者,編者に依頼したり,高評価の有料アクセス誌をオープンアクセスに変更するなどして解消される。

 後半部分では,一般的に語られている以下の7つの疑念が,それらに対する様々な解消策と共に紹介されている。

  • (4) 評価が少ないことなどから生じる品質への疑念
  • (5) 後世への保存についての疑念
  • (6) 査読の証拠が見られないことや,編集者名や連絡先を非公開にすることなどによる誠実性への疑念
  • (7) 著者が出版者に支払う経費が,不正な査読や著者への金銭的負担などを生じさせることについての疑念
  • (8) 利益や金銭的余裕がないために生じる維持可能性への疑念
  • (9) SCOAP3(E812参照)を始めとする,有料アクセス誌からオープンアクセス誌への転向に対する疑念
  • (10) 課題に対する戦略についての疑念

 10番目の課題では,その他の課題への対処として,自分の庭を手入れするように,よい著作を継続的に作っていく「ガーデニング」と,議論に参加し,反論や誤解に答えていくことである「行動主義」という,2つの方法が紹介されている。課題を克服し成功をおさめられれば,それが前例となり他誌をサポートすることになると本稿は括られている。

Ref:
http://www.earlham.edu/~peters/fos/newsletter/10-02-09.htm#challenges
http://river-valley.tv/ten-challenges-for-open-access-journals/
http://www.oaspa.org/
E275
E812
E849
E889