カレントアウェアネス-E
No.157 2009.09.02
E968
図書館はコミュニティ再生の核―2009年「学習へのアクセス賞」
情報への自由で平等なアクセスを実現するために革新的な活動を行っている図書館などにビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が授与している「学習へのアクセス賞」(E245,E374,E559,E691,E827参照)を,2009年はコロンビアの都市メデジンにある非営利組織“Fundacion Empresas Publicas de Medellin”(メデジン公社基金)が受賞した。
メデジン公社基金は,情報・技術,教育プログラム,文化的サービスなどへのアクセスを提供することにより,メデジンの人々を1つのコミュニティにまとめるための支援をすることを使命とし,事業の一環として,メデジン都市圏にサービスを提供する公共図書館ネットワーク全34館の運営を手がけている。暴力行為により,一度はバラバラになってしまったメデジンのコミュニティ再生に,公共図書館ネットワークの活動は大きな貢献をしており,それが評価されて今回の受賞となった。図書館は今や,自己開発,経済発展のためのツールを提供してくれる場所であり,ローカルなコミュニティの感覚を生むとともに,グローバルなコミュニティへの繋がりも提供してくれる場所となっている。
公共図書館ネットワークは,低所得者,若者,高齢者などに特に手を差し伸べてきた。現在,図書館の利用者の約7割は学生で,彼らにとって図書館は,宿題をし,電子メールをチェックし,友達と交流するための,放課後に向かう場所になっている。このような学生の1人は,図書館がコミュニティにもたらした変化を肌で感じ,次のように述べている。「以前は子どもやティーンエージャー向けの資料はほとんどなかったけれど,今ではコンピュータも本もある。暴力行為は大幅に減った」。
図書館では,コンピュータの使い方,オンライン情報へのアクセスの仕方,インターネットを利用するための英語などを含む,様々なトレーニングプログラムを提供している。さらに,学生,子ども,起業家向けには特別な講座が準備されている。図書館の講座を受講することにより,全くコンピュータを使ったことのなかった調理師が,コンピュータによる費用見積り,帳簿の作成,ビジネスの売り込みを学び,自分のレストランの開業を志すまでにスキルを身につけたという例など,図書館のおかげで人生が変わったという人は少なくない。
そのほか図書館は,提供するコンピュータの台数拡大や図書館のポータルサイトにより,デジタルデバイドの縮小にも寄与している。今では図書館の月間来館者は50万人,ポータルサイトとOPACの月間アクセス数は15万にのぼる。
今回の受賞を受け,公共図書館ネットワークのコーディネータは「コミュニティの一部となれば,人々はよりよく学ぶことができる,こう私たちは信じています」と語っている。公共図書館ネットワークではさらに100万の住民に奉仕するため,今後2年間で4つの図書館を新たに建設する予定だという。
Ref:
http://www.gatesfoundation.org/atla/Pages/2009-access-to-learning-award-fundacion-empresas-publicas-de-medellin-colombia.aspx
http://www.fundacionepm.org.co/site/
http://www.reddebibliotecas.org.co/sites/bibliotecas/Paginas/Default.aspx
E245
E374
E559
E691
E827