カレントアウェアネス-E
No.157 2009.09.02
E967
福井県立図書館「覚え違いタイトル集」ができるまで
2009年8月,福井県立図書館のウェブサイトに掲載されている「覚え違いタイトル集」がインターネット上を中心に話題を集めた。「散歩する漱石」(正しくは『闊歩する漱石』),「もたれない」(正しくは『倚りかからず』)など,思わず頬が緩むような覚え違い事例が数多く紹介されたこのページには多数のソーシャルブックマークが付けられ,ニュースサイトでも紹介されるなど,多くの注目を集めた。このページについて,福井県立図書館の担当者に話を聞いた。
【ホームページでの公開のきっかけ・理由等について】
貴重な事例を職員だけで独占していてはもったいないと思い,ホームページにアップすることにしました。公開の目的は,2つあります。目的の1つ目は,直截的なものです。カウンターで職員にたずねてくださるお客様はほんの一握りで,多くのお客様は,OPACでの検索で「ない。みつからない」としょんぼりしておられるはず。そのような方に,ヒントとして活用していただきたいと思ったからです。
目的の2つ目は,レファレンスサービスの認知度を高めることです。図書館のレファレンスサービスというのは,実はかなりの力があるのに,ほとんど知られていません。福井県立図書館のホームページでは,レファレンス事例集やパスファインダーをアップして,レファレンスサービスの広報に努めてはいますが,そもそも,「図書館のページ」の訪問者にレファレンスのページを開いていただかないと情報にアクセスしてもらえないという大きな欠点を克服できないことには,話になりません。
Webコンテンツを見ていただくためにはそこにエンタテインメント性,すなわち「面白さ」が必要だと思います。覚え違いタイトル集は,福井県立図書館のエンタテインメントコンテンツであり,図書館を知っていただく,訪れていただくためのしかけです。ここに「面白そうだから」と訪れていただいて,ついでにいろんなページをご覧いただき,図書館について知ってもらえれば,そして,レファレンスのメールなどを送っていただければ,ふらりと行ってみようかなという気持ちになっていただければ,最高です。
【カウンターでの対応で心がけていることについて】
カウンターにいらっしゃる方の中には,すでにOPACでご自分で検索したがどうしてもヒットしない,と少し落胆している方が多いです。「なにかヒントをくだされば探しますよ。探させてください」と笑顔で対応するよう心がけています。最終的に見つかった時に見せてくださるお客様の笑顔は何物にも代えがたい宝物です。
以上,担当者のコメントの一部を紹介した。なお,2007年から公開されていた「覚え違いタイトル集」がこのタイミングで注目を集めたのは,担当者がtwitterで発したコメントを読んだ人がページを見てブックマークを付け,それが広まっていった,ということがきっかけの一つだった模様である。この広まり方も,今日の広報手段を考える上で,興味深い点だと思われる。
(協力:福井県立図書館)
Ref:
http://www.library.pref.fukui.jp/reference/mosikasite.html
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.library.pref.fukui.jp/reference/mosikasite.html
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0908/17/news081.html