カレントアウェアネス-E
No.113 2007.09.12
E691
ゲイツ財団の学習へのアクセス賞,2007年は豪の図書館が受賞
「学習へのアクセス賞」は,ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が,情報への自由で平等なアクセスを実現するための革新的な活動を行っている図書館や類縁機関に対し授与している,賞金100万ドル(約1.1億円)の賞である。例年,国際図書館連盟(IFLA)の年次大会でその年の受賞者が発表されているが,先日閉幕したIFLAダーバン大会で,2007年の同賞をオーストラリアのノーザンテリトリー図書館(Northern Territory Library;NTL)が受賞したと発表された。
オーストラリアの準州の1つノーザンテリトリーには,先住民が多く住み,人口のほぼ30%を占めている。彼らの居住区域は他地域から極端に孤立しており,インフラの整備が行き届いていないほか,医療,教育,就職率の水準が全国平均を下回っているという。こうしたギャップを埋めていく活動の1つとして,今回ゲイツ財団に高く評価された,遠隔地に住む人々に向けたNTLの取り組みがある。
NTLは,先住民の芸術や歌,オーラルヒストリーをデジタル化して保存しているデータベース“Our Story”を運営している。このデータベース構築には地域の人々が深く関わっており,彼らのICTスキルやICTリテラシーの向上に一役買っている。NTLは「図書館・知識センター(Libraries and Knowledge Centres;LKC)」という地域センターを22か所運営しているが,地域の人々はLKCのコンピュータを使って,Our Storyに自分たちの文化遺産を保存していく作業を通じ,ICTスキルを身につけている。ICTスキルを身につけた人は,LKCにスタッフとして雇用されるチャンスを得,そのようにして雇用されたスタッフが,新たに先住民の人々を教育するという循環ができている。
またOur Storyは,先住民の人々がICTスキルやICTリテラシーを身につける一助となっているだけでなく,彼らの誇りの源泉となり,さらには,Our Story目当てで図書館に足を運ぶことが,インターネットを通じた情報収集や読書など,他の教育機会に触れるきっかけともなっているという。
NTLはこうした活動が評価され,今回100万ドルの賞金を得たが,この賞金はLKCの図書館スタッフや図書館利用者の教育機会を拡大するために使うという。さらに,図書館の300台のコンピュータをアップグレードするため,マイクロソフト社がNTLに22万4千ドルを寄付する予定である。
Ref:
http://www.gatesfoundation.org/GlobalDevelopment/GlobalLibraries/Announcements/Announce-070820.htm
http://www.ntl.nt.gov.au/ntl_home
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