カレントアウェアネス-E
No.64 2005.08.17
E366
中国の農村に情報アクセスを提供する試み
2004年にゲイツ財団の「学習へのアクセス賞」を受賞(E245参照)した,青樹地域図書館サービス(China Evergreen Rural Library Service: CERLS)の活動を紹介するレポートが,7月,図書館情報資源振興財団(CLIR)から刊行された。
中国の農村部や都市出稼ぎ労働者の居住地区では,貧困のため教育の機会や情報アクセスが制限されている。図書館も新しい資料を買う余裕がなく,インターネットを見たことがないという人も多い。CERLSは,こうした中国農村部への教育支援を目的に活動する米国のエヴァーグリーン教育財団が2001年から行っているプロジェクトで,省政府と連携しながら高等学校の図書館活動を支援している。
CERLSは現在,青海省や甘粛省といった中西部の農村にある学校や,北京の出稼ぎ労働者の子弟の通う学校,10校の図書室に対し,資料購入費の助成,コンピュータ機器やソフトウェアの寄贈などを行っている。図書室は生徒のみならず,地域住民にも開放されており,100万人以上の人々にインターネットへのアクセス機会を提供している。また,生徒や地域住民に対するコンピュータの使い方などの情報リテラシー教育や,図書館員や教師を対象にした図書館実務研修,図書館システム研修も行っている。情報格差のある地域に対して図書館はどのような貢献ができるか,ということを考える上で注目に値する活動例である。
Ref:
http://www.clir.org/pubs/abstract/pub130abst.html
http://www.cerls.org/
http://www.evergreeneducation.org/
E245