カレントアウェアネス-E
No.157 2009.09.02
E969
フランス国立図書館とGoogleの連携をめぐる動向
フランス国立図書館（BNF）は，Googleブック検索プロジェクト（現在は「Goolgeブックス」としてサービスを提供）に以前は懐疑的であった。ジャンヌネー（Jean-Noel Jeanneney）BNF前館長は，『Googleとの闘い』という書籍を著し，Googleという米国の一企業による書籍文化の独占に対し異議を申し立てていた。しかし，2009年8月，BNFが，Googleと書籍のデジタル化の領域での提携交渉を進めていることが明らかとなった。
こうした提携につき，最初に報道を行ったのはラ・トリビューン紙（La Tribune：2009年8月18日電子版）であった。同紙は，ブリュックマン（Denis Bruckmann）BNF館長補佐兼収集部長の「BNFはあと数か月でGoogleとの提携交渉を終了するだろう」という言葉を紹介している。BNFはこれまで，Googleのデジタル化プロジェクトに対し反対の意を表明してきたが，こうした戦略の変更の大きな理由はやはりデジタル化予算の問題であると報じている。経済的問題が，戦略の変更の最も大きな要素であったことは，リベラシオン紙（Liberation：2009年8月20日電子版）も報じているところである。
ル・モンド紙（Le Monde：2009年8月18日電子版）は，ラ・トリビューン紙の記事を受けて，特に，デジタル化予算について詳しく説明している。BNFが実際に資料1ページをデジタル化すると12～74サンチーム（約15.6円～96.2円）かかることになる。この計算でいくと，フランス第3共和政（1871年～1940年）時代の資料をすべてデジタル化すると5,000～8,000万ユーロ（約65億円～104億円）が必要となる。しかしながら，現在BNFがデジタル化に関して得ている予算は，年間わずか500万ユーロ（約6億5千万円）に過ぎない。こうした予算難を背景としてGoogleと提携を結ぼうとしていると報じている。
ル・フィガロ紙（Le Figaro：2009年8月18日電子版）は，Googleが米国を中心に1,000万冊の書籍をデジタル化しつつある一方で，EU各国が協力して構築しているEuropeana（欧州デジタル図書館；CA1632，E862参照）がデジタル化しているのは，テキスト，画像，音声資料など400万点に過ぎないことを述べ，大きく差が広げられている背景を紹介している。
ラ・トリビューン紙が上記のような報道を行ったことを受けて，BNFは自館ホームページにおいて次の2点を述べている。すなわち，(1) まだ交渉は続いており，連携締結には至っていないこと，(2) BNFの監督官庁である文化・コミュニケーション省が採るであろう戦略にのっとり，Googleと提携してもインターネットでの資料閲覧等のために有料化はしないこと及び著作権が切れた著作物にのみ自由なアクセスを認めること，を表明している。
CNET newsによれば，Google関係者は，BNFのような著名な施設と提携できるのであれば非常にうれしい，しかし，現段階でコメントすることは何もない，と語っている。
（調査及び立法考査局：鈴木尊紘）
Ref:
Jeanneney, Jean Noel. Googleとの闘い. 佐々木勉訳. 岩波書店, 2007, 166p.
http://www.latribune.fr/depeches/reuters/la-bnf-pourrait-confier-a-google-la-numerisation-de-son-fonds.html
http://www.liberation.fr/culture/0101586181-google-bnf-le-pacte-des-sous
http://www.lemonde.fr/archives/article/2009/08/18/la-bnf-negocie-avec-google-la-numerisation-de-son-patrimoine_1229430_0.html
http://www.lefigaro.fr/hightech/2009/08/18/01007-20090818ARTFIG00332-la-bnf-se-laisse-seduire-par-google-.php
http://www.bnf.fr/pages/zNavigat/frame/dernmin.htm?ancre=com_numerisation.htm
http://news.cnet.com/8301-30684_3-10312630-265.html
CA1632
E809
E817
E862
