E970 – 韓国で2回にわたる著作権法改正

カレントアウェアネス-E

No.157 2009.09.02

 

 E970

韓国で2回にわたる著作権法改正

 

 2009年春,韓国の著作権法が2回にわたり改正された。3月25日に公布された改正法(3月改正)と,4月22日に公布された改正法(4月改正)である。

 3月改正には,図書館に関連する内容の改正が含まれている。この改正の原案となった3つの議員案のうちの1つが,2009年9月26日に施行予定の改正図書館法を前提として提案されたものだったからである。この改正図書館法では,第20条の2(オンライン資料の収集)という規定が新設された。国立中央図書館が,韓国において提供されているオンライン資料のうち保存価値が高いものを選定して収集・保存しなければならないとする規定である。3月改正では,この図書館法改正を受けて,第31条(図書館等における複製等)に第8項「図書館法第20条の2により,国立中央図書館がオンライン資料の保存のために収集する場合には,当該資料を複製することができる」という規定を新設している。

 一方,もっぱら巷で話題になっているのは,4月改正である。「オンライン上の不法な複製を効果的に根絶するため」に提案された4月改正では,オンライン上の著作権について規定していたコンピュータプログラム保護法が廃止され,オン/オフライン上の著作物すべてについて著作権法に統一して規定することになった。

 論争になっているのは,P2Pやファイル共有サービスなどの掲示板を利用したオンライン上での常習的な著作権侵害について,いわゆる「3ストライク制」が導入された点である。3回警告を受けた違反者や掲示板が再度違反した場合,新設される韓国著作権委員会の審議を経て,最長で6か月のインターネット接続制限又は掲示板の閉鎖が課される(正確にいえば「4度目でアウト」だから「4ストライクアウト制」だろうか)。

 この行政機関の判断による「3ストライク制」については,フランスで憲法院が違憲と判断を下している(E944参照)。韓国でもフランスの例を取り上げて,4月改正を違憲とする主張があったが,政府は,フランスと異なり韓国ではメール用アカウントは認めるなど,インターネットへの接続を一切制限するわけではないため,違憲ではないと主張している。

(調査及び立法考査局・白井京)

Ref:
http://likms.assembly.go.kr/bill/jsp/BillDetail.jsp?bill_id=PRC_Y0Y9I0O2Q0N3J2L0B0L9T0T2R5Z4H8
http://likms.assembly.go.kr/bill/jsp/BillDetail.jsp?bill_id=PRC_O0B8R1V1H2U7K1D4O5H0J5Z5I4U7P0
http://www.mediatoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=81547
http://weekly.khan.co.kr/khnm.html?mode=view&code=115&artid=200908121941551
http://www.munhwa.com/news/view.html?no=2009072501030730074002
http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/issue/media/1248374407657Staff
http://it.nikkei.co.jp/internet/column/korea.aspx?ichiran=True&n=MMIT13000019082008&Page=1
E944