カレントアウェアネス-E
No.133 2008.08.13
E817
フランス初,リヨン市立図書館がGoogle Book Searchと協力関係
Google Book Searchはこれまで,主に英米圏の図書館と協力関係を築いてきたが,ここにきて英米圏以外の図書館との協力関係を構築し,多言語化へ舵を切りつつある。日本では,既に慶應義塾大学がGoogle社と提携しているが(E676参照),去る2008年7月11日,フランス・リヨン市立図書館とoogle社がデジタル化プロジェクトで合意した。Google社と協力関係を結ぶフランスの図書館は,これが初めてである。
リヨン市立図書館は,特徴ある蔵書構成で知られる。特に国宝級の歴史的書物を多く所蔵しており,その数は,フランス国立図書館(BnF)に次いで2番目の規模である。リヨンは中世において印刷業が盛んな都市であり,『ガルガンチュワとパンタグリュエル物語』を記したフランソワ・ラブレー(Francois Rabelais)も,リヨンの出版社から数々の書物を発表したという経緯がある。Google社が今回デジタル化の対象とするのは,16世紀から19世紀の終わりまでに刊行された,パブリック・ドメインにある45万~50万冊であり,その中にはモーリス・セーヴ(Maurice Sceve)やノストラダムス(Nostradamus)の著作等,歴史的に貴重な書物が多いと発表されている。また,フランス語のみならず,イタリア語,ラテン語,ドイツ語及びスペイン語等の古典書籍も数多く含まれている。
Google社とリヨン市立図書館は,今後10年間,協力関係を結ぶ。どの書籍をデジタル化するかという選択はリヨン市立図書館員が行い,Google社は,リヨン市郊外にスキャニングをする小工場を建設し,デジタル化作業を実施する。こうした作業によって,リヨン市立図書館の蔵書は,インターネットを通じて,リヨン市立図書館のサイト及びGoogle Book Searchから閲覧することが可能になる。Google社は,この事業のために,6,000万ユーロ(約102億円)をつぎ込むと報道されている。
Google Book Searchプロジェクトに対しては,ジャン・ノエル・ジャンヌネー(Jean Noel Jeanneney)BnF前館長は,各国の公的機関がインターネット上の各国の文化を守り,文化的多様性を維持していく必要があるという観点から,危惧を訴えていた(E809参照)。今回,Google社とリヨン市立図書館の共同プロジェクトに対し,BnFのブリュノ・ラシーヌ(Bruno Racine)現館長が,ジャンヌネー氏が批判をしていた2005年とは,状況が大きく変化していると語りつつ,同時に,Googleがリヨン市立図書館のデータを占有することなく,そのデータを開放してくれれば,欧州デジタル図書館(CA1632参照)の中に取り込みたいと述べている。
Ref:
宮下志朗. 本の都市リヨン. 晶文社, 1989, 446p.
http://www.livreshebdo.fr/actualites/DetailsActuRub.aspx?id=1981
http://www.lemonde.fr/culture/article/2008/07/12/accord-entre-google-et-la-bibliotheque-de-lyon_1072853_3246.html
http://www.bm-lyon.fr/infoweb.pdf
http://www.lyon.fr/vdl/sections/fr/evenements/500_000_livres_en_li
http://booksearch.blogspot.com/2008/07/first-for-france-city-of-lyon-and.html
CA1193
CA1632
E676
E809