カレントアウェアネス-E
No.134 2008.08.27
E828
健康図書館サービスの将来を論じる報告書が公表(英国)
英国国立健康図書館(National Library of Health;NLH)は2008年2月末,2点の文書を公表した。1点は,21世紀における健康図書館,図書館員の役割・意義について,「国民保健サービス(NHS:CA1536参照)」が助成している「健康図書館(Health Library)」のサービスをレビューした報告書“Report of a National Review of NHS Health Library Services in England”(以下,「報告書」),もう1点は,健康図書館が提供する図書館・知識サービス(Library/knowledge Service)の品質を定めたフレームワーク“National Service Framework of Quality Improvement”(以下,「フレームワーク」)である。
報告書はニューカッスル大学健康社会センターのヒル(Peter Hill)教授がまとめたものである。ヒル教授はNLHや各健康図書館の活動の根底を支える目標を,知識を医療の場に提供し,さらにその知識を患者の治療や全住民の健康に応用することである,とする。そして,その達成のために保健省,NLH,NHS,各健康図書館など,健康情報に携わる各プレイヤーは今後,この報告書で取り上げている50の推奨事項を実施すべきであると述べている。推奨事項にはたとえば,医療上の意思決定,医療政策の策定,調査研究,健康専門職の生涯学習をサポートするために,NHSの支援を受けている図書館や知識情報サービス機関に必要不可欠であるサービスについてまとめた公式ガイドラインを,保健省が速やかに取りまとめるべきであるとの提言,図書館・知識サービスはNHSの核となる業務の1つであると,保健省やNHSに直ちに認識させる必要があるとの指摘などがある。
一方のフレームワークは,医療機関を支援する全ての図書館・知識サービスに対する,品質保証,品質管理,品質コントロールのメカニズムとされており,健康図書館サービスの再構築と開発を行い,現代的な図書館・知識サービスを形成するために,NLHとNHSが共同でまとめたものである。このフレームワークを利用することにより,各図書館・知識サービス機関が,国家基準にどの程度準拠しているかを,組織自らが評価することが可能となる。また,品質改善計画を示し,サービス責任者に対しては明確な方向性を提供するなど,行動計画作成に際して,何が焦点になるのかをはっきりと示す内容となっている。
これらの報告書とフレームワークによるNHSの支援を受けている英国の健康図書館の変化,また健康情報に関する図書館・知識サービスの現代化の行方が,注目される。
Ref:
http://www.library.nhs.uk/aboutnlh/review
http://www.library.nhs.uk/nlhdocs/press_release_final.pdf
http://www.library.nhs.uk/nlhdocs/national_library_review_final_report_4feb_081.pdf
http://www.library.nhs.uk/nlhdocs/nsf_for_quality_improvement_2008_v1.1.pdf
CA1536